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『「自分が食べて美味しいものをつくる」と、味へのこだわりを語ってくれた『歩人』代表の岡 孝圭さん 「香辛料を食べているようなソーセージは嫌い。母親が子供に料理を作るような感覚で、優しい味に仕上がるよう心掛けています」と話すのは、美瑛町美沢地区でハム・ソーセージ工場とレストランを経営する歩人(ほびっと)の岡孝圭さん(52)。「味を濃くすれば試食会では好評だが、そういうものは作らない。自分が食べて美味しいものを作ることにしている」と自分の味にこだわる。それは、岡さんが『師』と仰ぐ人から「お金を貯めて、1週間に1度でもおいしいものを食べ、舌を鍛えろ」とアドバイスされたことがソーセージ作りの原点にあるからだ。 岡さんは、兵庫県尼崎市の出身。江別市にある酪農学園大学で、食肉加工品の製造方法の習得を目指し、同大の肉製品製造学研究室で、食肉加工学の勉強を続けた。その後、静岡県の大手ハムメーカーへの就職を経て、生肉と養豚の技術を学ぶため、札幌で養豚業者が経営する食肉店に転職し、食肉加工場の新設時には工場長も勤めた。そして、30歳の時、一念発起して脱サラ。現在地に自前の工場を建設し、肉加工品の製造とレストランを始めた。
美沢地区は、白金温泉に向かう途中にある、美瑛町でも奥まった地域。いまでもクマが出ることもあるそうで、シカなどは珍しくもない。そんな地区を選んだことについて岡さんは「嫁さんと2人で道内を周り、ソーセージ作りの工場と住居を建てる土地探しをした。そのとき『ここに一生住みたいね』と思える場所がいいと思った。そうやって選べば、仮に商売に失敗しても住み続けることが出来るでしょ」と笑顔で話す。 建設場所に決めたとき、当時の役場、商工会、金融の関係者からは「何でこんな所に、工場やレストランを建てるのか」と猛反対されたという。しかし、2階からは十勝岳連峰がくっきりと見えるほか、夜は満天の星を眺めることが出来る。そして、大好きなジャズも大音量で聴くことも可能だ。つまり、岡さんにとってこの場所は、商売をする場所ではなく、夫婦そろって『生きる場所』だったのだ。 また、登山家だった父親の影響も大きい。ハムメーカーを退社したとき、母親からはひどく叱られたが、父親は満足そうな表情だったという。サラリーマン生活を続けるより、自分で道を切り開いてほしいというのが、父親の本音だったらしい。山の見える自然の豊富な環境の中で、好きな肉加工品を作ることのほうが、父親は気に入っていたようだ。
ハム・ソーセージ作りで、岡さんがまずこだわるのは肉の鮮度。上富良野町に屠殺(とさつ)場があるので、直接入荷が可能。冷凍の肉は一切使用しない。前日の夕方6時ころまでに、ファックスで注文を入れれば、翌日の10時までには新鮮な肉が届く。それに、試作を繰り返して編み出した、独自の香辛料をブレンドし、12C゜以下の状態で、肉とともによく練り上げる。そして、手際よく腸詰にし、ねじった後、むらし、乾燥、薫煙の工程に入る。最後に63C゜で30分間加熱する殺菌作業を経て、製品が完成する。また、発色剤として用いられる亜硝酸も、非常に致死率が高く薫煙製品にとって怖いボツリヌス菌に対する静菌作用と、肉の獣臭をハム・ソーセージ独特の風味に変化させるメイキングフレーバーとしての働きに注目し、食品衛生法に従い使用している。「添加物を使用することを嫌がる人がいるけど、自分は無添加でお客様を呼ぶのではなく、味で勝負したいし、お客様の不利益になる商品は作りたくない」と“岡流”の加工哲学を明かす。
作り方についても、既存の方法にはこだわらない。だれかが考えたことを、そのまま真似して製品化することに魅力を感じていない。実は、大学卒業後、岡さんは1度、ドイツに行ってソーセージ作りなどの修行をすることを考えていた。しかし、『師』と仰ぐ人から「いまの時代、技術はどこにいても学ぶことが出来る。それより味に対する自分の舌を鍛えろ」といわれたことで、ドイツ行きを止めたという経過がある。
商品開発では、長女ために、子供でも食べやすいソーセージを作ったり、レバー嫌いな奥さんのために、スモークレバーを試作し、商品化に漕ぎ着けている。
消費者の反応が見たいと開設したレストランは、ハム・ソーセージ・ベーコンの盛り合わせがメニューの中心。
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