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食材に惚れ込み、ケーキ作りに専念
ケーキ作りについての思い入れを語る矢野さん
タギージョ「シフォンケーキ」 かみかわ中部 旭川市
無類の料理好き

 12年間、神居で営業を続け、シフォンケーキのおいしい店として人気を博していた「タギージョ」。装いも新たに自宅のある忠和に移転し、営業を再開した。元々、料理が得意で娘さんから「お母さんには18番のメニューはないね。料理のパターンが豊富だよね」といわれたと笑う矢野友子(56)さんが、ケーキ作りを一手に引き受ける。テレビの料理番組を見て、毎日そのレシピを作り続けたこともあったというほどの料理好きだ。

 シフォンケーキは、警察官の妻だった姉が、転勤先で村の人たちに作り方を教えていたのを見て覚えた。別に特別な方法ではなく、添加物や膨張剤などを入れて焼く、ごく一般的なものだ。また、趣味としてホームメイド協会が主催するパン作りの講習にも出かけ、パンを作ったこともある。ただ、これも普通のやり方で、趣味の域を出なかった。

 

美味のソフトクリームとの出会い

 転機が訪れたのは、夫の矢野達雄さん(61)が勤めていた会社の倒産だ。もう13年ほど前のことになる。ある日、気晴らしも兼ね、東旭川にあるレストラン「ノースプレインファーム・エスペリオ」に夫婦で出かけた。以前、友子さんが味わってみて、すごくおいしいと感じていたソフトクリームを食べるのが目的だ。

 一緒に食べて、やはりおいしいと思った。しかも、原料となる牛乳は、オホーツク海に面する小さな町、興部町で育てられた健康な牛から搾られたものだと知った。すでにブランド牛乳として確立している「オホーツクおこっぺ牛乳」。

 100haを超える広大な牧場で、伸び伸びと育った牛から作られる牛乳は、脂肪分を砕く「ホモジナイズ処理」を行っていないため、自然なおいしさが保たれている。そのとき矢野さん夫婦は「この牛乳は体に安全なもの。これで商売が出来ればいいね」と感じたという。

 

夫婦で興部へ移住

 早速、レストランのオーナーであるノースプレインファームに問い合わせたところ「自分たちの仲間になるのであれば、牧場での体験やレストランの開業も手伝っていい」という返事だった。ただし、夫婦で興部町に移住し、町民になって研修して欲しいという条件が付けられた。折角のチャンスを無にするわけには行かなかった。移住手続きをして、約半年間、研修を受けた。

 旭川に帰って、神居地区に新しい店舗の建設予定地と書かれた看板を見つけた。オーナーと相談して、この場所で開業することを決める。店名は「タギージョ」。エスペラント語で「夜明け」を意味する。再出発を目指す矢野さん夫婦にとって、ぴったりの名前だと感じた。

 

材料へのこだわりと執念

 レストランの看板メニューは、ハンバーグだった。ノースプレインファームから提供される牛肉に、豚の脂身肉をブレンドしたジューシーなハンバーグだ。ただ、メニューには矢野さん夫婦独自のものが必要だった。そうでなければ、単なる姉妹店でしかない。自分たちにしか出来ないメニューを検討する中で、浮上してきたのが、かつて姉が作っていた「シフォンケーキ」だった。

 しかし、当時と同じものを作るわけには行かない。しかも、売り物として提供するからには「安心、安全なもの」という基本があった。独自性にこだわるからには、まず材料を厳選した。主原料となる小麦粉は、道産に限った。卵は比布町の「カッパの健卵」というブランド物を使用することにした。牛乳は、もちろん「おこっぺ牛乳」。砂糖など、他の材料も出来るだけ道産のものを使った。

 材料が揃ったところで、シフォンケーキの試作品作りが始まった。ただ、レストランを営業しながらの商品開発ということで、思うように作業は進まなかった。「最初のころは、丸く焼きあがるはずのケーキが陥没してしまうことが多く、うまくいきませんでした。でも、材料の分量を調整しながら作り続ける中で、2年位経ったところ、商品になるものが出来ました」と友子さんはいう。料理好きの“執念”が背景にあったようだ。


自宅を改装し、新たなスタートを切った「タギージョ」。旭川では数少ない「おこっぺ牛乳」のソフトクリームも味わえる。店内では、カップなどの雑貨も販売されている。

 

米粉や季節限定品も開発

 ベーキングパウダーなどの膨張剤のほか、添加物は一切使用していない。したがって、焼きあがった生地は、気泡が大きめになる。それが、タギージョならではの、ふわふわの食感を作り出しており、人気の一因になっている.

 シフォンケーキは、プレーンのほか、ココア、アールグレー紅茶、抹茶、黒豆の5種類を商品化した。また、小麦粉アレルギーの人も食べられるよう米粉を使ったケーキも開発した。ほかにも、10月から翌年1月までの期間限定品として、かぼちゃ味のケーキも作っている。原料のかぼちゃはマスターの達雄さんの妹が、上富良野町で栽培したものを使用。甘くて、ほっこりしたかぼちゃの風味が生かされたケーキだ。


★「シフォンケーキ・プレーン」(1カット)250円(税込)
ケーキは、ほかにもココア、黒豆きな粉などがある。

 

夢だったケーキ教室も開催

 自宅で営業を再開するため、昨年神居の店を閉めたとき、わずか3日間で常連客など170人から「移転先の住所を教えて欲しい」との連絡が寄せられた。友子さんは「12年間も神居地区でやらせてもらって、タギージョが地域に浸透していたからだと思う」と振り返る。ただ、「元々、自宅でやろうと思っていた。体力的なことも考え、店の規模は前の半分程度にした。自宅でやれば、ケーキの値段も下げることが出来ますしね」(友子さん)とにっこり笑う。

 再開を機に、これまでの夢だったケーキ教室「シフォンケーキレッスン」を開くことにもなった。友人同士での参加で、材料はすべて取り揃えてくれる。自宅での再開は、本当の意味での「地域密着型」のケーキ作りにつながって行くようだ。

 

  タギージョ
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