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最終更新日:2016年3月23日(水)


かみかわ「食べものがたり」: どこか農場「ベリー酢」


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どこか農場
「食は生活の基本人間が生きていくうえで欠かせないことをやるのは、やりがいがあります」と語る、どこか農場の武田守弘さん
どこか農場「ベリー酢」 かみかわ南部中富良野町



 いつかどこかで。

 そんな言葉から付いた「どこか農場」、そして「いつか」は大切なお嬢さんの名前です。

 水田を作り、ニワトリを育て、ヤギが居る生活。どこか農場の武田守弘さんは平成4年、有機栽培の農業がやりたくて愛知県から北海道に来ました。武田さん、40歳の決意。それまで報道関係の仕事を15年間。ラジオ番組の制作や報道記者として活躍していました。

 きっかけは奥様を亡くされたこと。一人娘を育てるために、子育てと両立できる仕事を…。それが農業でした。「娘のために会社を辞めて、ここに来たと思われるのも困るんです。娘のことも考えたけど、もともと好きだった農業をやりたくて来たのだから」と、ゆっくりと言葉を続ける武田さん。決して娘さんの重荷にならないように、父親としての優しさが滲みます。

 「農業は生活の最も根幹の仕事。やりがいがあると思いました」。2年間、愛知県の岡崎市で有機栽培の農業研修を受けました。「自給自足をするためには米が必要。米を作れる場所を探していました」。愛知県では土地が高すぎて断念。色々探すうち、なかなか買い手がなく売りに出されていた離農農家を見つけました。それが、北海道中富良野町です。

 目標は、自給自足をして、余ったものを売る生活。しかし、それは思った以上に厳しいものでした。武田さんが移り住んだ中富良野町は、もともと周りも農家ばかりでなかなか農作物を買ってくれる人がいません。「個人でお客さんを見つけ、1年契約で農作物を届け、その収入で生計を立てる」という、岡崎市では可能だったことが、北海道ではうまくいきません。さらに作物の作れない厳しい冬も待ち受けていました。







 武田さんは農業の道を模索しながら、果物を植え始めます。初めはリンゴやプルーンに挑戦していましたが、大きな果実の無農薬栽培は困難をきわめました。すぐ虫がついてしまうので、防虫剤や腐敗しないための薬を撒く必要があります。「無農薬で安全なものを作りたくてここに来たのに、それでは来た趣旨と違ってしまう」。何とか薬を撒かなくても良いように、手作業で虫を取りましたが追いつきません。

 様々なものを栽培するうちに、ベリー類は病害虫に強いことに気付きました。また、例え虫がついても背丈が低いため虫取りの作業がしやすいのです。「無農薬で育てるなら、ベリーが良い」。失敗を重ねる中で辿り着いた答えに、武田さんは賭けました。

 収穫時期をずらすために、様々な種類のベリーを栽培。多品種少量生産の選択は、観光農園にするためにも最適でした。現在では、ベリー農園は1ヘクタール。10種類のベリーが2,500本も植えられています。(観光農園入園料600円。200gまでの持ち帰り料込み)





 やがて、ベリーをジャムなどに加工して土産店やネットで販売するようになりました。12種類のジャムと、それらをミックスさせたもの。計15種類のジャムを手作り。中には「七月の星空」「八月の夕焼け」「九月の黄昏」など、ロマンあふれるネーミングのジャムもあります。ジャムは混ぜれば混ぜるほど、また新しい美味しさを生みます。それぞれの個性が混ざることで調和するのです。

 平成14年には、農産物を活かしたジャムや野菜を出そうと「たまごカフェ」をオープン。カフェの食事メニューはたった1つ、自家製野菜を使った和風ポトフ定食です。「厨房スタッフの腕が良いので、お客さまは残さず綺麗に食べてくれます」と人気の様子がうかがえます。

 そして、平成22年から新たに始めたのがベリー酢です。カシス、ブルーベリー、ルバーブなど11種類があり、製造は北見ブランドの会に委託しています。「ジャムはパンぐらいにしか使わないが、酢なら調味料として用途が広い。色々な料理に使えるので、土産にも最適だと思います」と武田さん。

 例えばルバーブは無色なのでレモン代わりに使えます。酸味がやわらかくまろやかで、カフェでも野菜の天ぷらにかける食べ方をおすすめしています。他の酢は、素材本来の色と香りが楽しめるバルサミコ酢のように、ドリンクやドレッシングなどにして楽しめます。


★「ルバーブ酢」 200ml 1,000円(税込) 
★「ブルーベリー酢」 200ml 1,000円(税込)
 
★「ハスカップ酢」 200ml 1,000円(税込)
 
★「ジャム各種」 90g 350円~(税込)
 

ベリーの酢は11種類もあり、こんなにバリエーション豊かな酢は珍しいそう
ホームページのネット販売か、たまごカフェで買えますジャムはホテルリゾート「ふらのラテール」の売店でも販売





 ジャムも酢も、全て原料は同農場で栽培したもの。例えばブルーベリージャムなど、甘みだけではなく酸味も足したい時には同農場のルバーブを入れます。一般的にはレモンが使われるのですが、「買ってきたものを入れることに抵抗があるのです」と武田さん。自分の野菜はどういう作り方をしているか分かるけれど、スーパーで売っているものは分かりません。「作り手の顔が見えない、どんな作られ方をしたのか分からないものはできるだけ出したくないんです」。自分で育てた原料だけで作りたい。それが、自分自身を納得させる方法でした。

 だから他の商品も、原料そのものの味を最大限に活かした素朴な味。「色々と手を加えていない、素材を生かしたジャムです」。他にもいろいろなものを加える方法もありますが、「それはしたくない」。あくまでも自分が栽培した原料にこだわります。

 取材時も厨房スタッフが、野菜の少なくなる冬のために、ストーブの上でニンジンなどの野菜を乾燥させていました。水で戻すと普通に使えて、保存食になるそうです。


ストーブの上で干しているニンジン(写真左)

 現在、どこか農場にはニワトリの他、ヤギもいます。いずれは搾乳してチーズを作りたいと、新たなる発想も描いています。「他にはないオリジナルを作りたい。人と同じことをするのではなく、自分なりの個性を出しながら、新しいものを作り上げたい」。いつかどこかで。そう思いながら、武田さんは今日も前を向いています。


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