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完全無農薬のにんじん搾りを作るきっかけについて話す多田さん。
「農村生活はけっして楽しいものではない」――多田農園を経営する多田繁夫さんにとって、農業とは「天候と価格という2つのリスクを抱えた、容易ではない仕事」でした。北国では農作物は年に1回しか収穫できません。一度災害に遭えば、収入は激減。農業で豊かな生活を求めることは非常に困難なことと映っていたのです。しかし「にんじん搾り」の加工販売により、今では「農村で楽しい人生を送る」という考えに変わってきています。
★「スウィートにんじんピクルス」(1瓶)648円(税込)
★「繊維入り にんじんジュース」(500ml・1瓶)1,080円(税込)
多田さんの家は、3代にわたり100年以上も続く農家。多田さんは親の後を継ぎ、玉ねぎ栽培を中心に長雨や低温、価格の変動などと戦いながら経営を続けていました。
そんな多田さんでしたが、17年前に一念発起し、玉ねぎからにんじんを中心とした経営に方向転換。大型のにんじん収穫機を導入し、洗いや選果施設も新設。予冷用の大型冷蔵庫も準備して、本格的なにんじん専門農家としてスタートしました。
また、多田農園専用のダンボール作りや、輸送用トラックの手配、市場の開拓など、農協や青果業者が行っている業務も自ら担当。小規模ながらも、生産から加工、そして販売までを手掛ける完結型の農家へ転換 しました。この完結型農業は「6次産業」と呼ばれます。生産(1次産業)から加工(2次産業)、販売(3次産業)をすべて取り揃え、掛け合わせた農業。それが6次産業です。
多田農園入口にある看板。園内には野菜の入った「農園おやき」などが食べられるカフェも設置されています。
当時を振り返って、多田さんは「初めてのことばかりであまりに忙しく、肉体はもちろん、精神的にもピークに達するくらいでした。ただ、早く借金を返して経済的に楽になりたいという一心で頑張りました」と明かします。
ところが限られた土地でにんじんを作り続けたため、いろいろな障害が発生。いわゆる連作障害というものです。まず、ピシウム菌という微生物が発生し、にんじんに黒いしみが出ました。農業関係者の間で「しみ症」といわれるものです。土壌の微生物バランスが崩れたのが原因でした。土壌には大きく分けて、放線菌と糸状菌が存在します。その微生物がバランスのいい状態だと、にんじんは健全に生育しますが、崩れると病気の原因となります。多田さんは作物の病気を回避するため、最初は殺菌剤を使用して対応していました。しかし、この殺菌剤は高価な農薬で、経費がかさむことに。さらにその後、農薬の使用基準が見直されて使用できなくなり、苦境に追い込まれました。
もうひとつの連作障害は線虫でした。線虫は1mm以下のミミズのような虫ですが、この虫がにんじんの根の成長点付近から根の中に侵入するとコブができて商品価値がなくなってしまいます。本当に始末の悪い障害なのです。これも農薬を使用し対応しましたが、いい解決策が見つかりません。有機資材を使用するという方法があることが分かりましたが、あまりに経費がかかりすぎるので断念せざるを得ませんでした。
ところが、前年にとうもろこしを栽培した土地に、にんじんを栽培したところ、線虫の被害に遭いませんでした。さらに「しみ症」も発生しません。短い周期の輪作体制を取り入れることで、大きな効果を得ることが分かったといいます。
また、10年前までは農薬も化学肥料も普通に使用していました。しかし、その年、農薬散布のため水和剤を水に溶かす作業中、誤って農薬が目に入ってしまいました。通常、農薬は1,000倍に薄めて使用しますが、その原液が目に入ってしまったのです。涙が止まらない状態となり、医師から有効な治療法はないと宣告されました。このため、いまでも常に涙があふれる症状が続いています。
これを境に、多田さんは農薬の使用量などを抑える、環境にやさしい農業を目指すエコファーマーの認定を取得します。同時に化学肥料も減らしながら、安全でおいしいにんじん作りに着手。現在は2ヘクタールの土地から約70トンのにんじんを収穫しています。
無農薬・無化学調味料で作られた「にんじん搾り」
★「にんじん搾り」(120ml入り・冷凍12袋入り)2,800円(税込)
「にんじん搾り」は、消費者のニーズに合わせて「無農薬・無化学肥料」、「減減農薬(農薬を1回使用)・無化学肥料」、「減農薬(基準値の半分以下)・減化学肥料」の3種類を用意。いずれも水を1滴も加えずに搾り、にんじんが本来持つ“甘み”を最大限に引き出しています。ジュースのように飲めますが、無添加のためそのままにしておくと1~2日で変色し、腐敗してしまいます。このため、搾りたてをそのまま冷凍し、鮮度を保つようにしています。
多田さんによると「母親ががんになった。食事療法のため、無農薬・無化学肥料のにんじんジュースを送ってほしい」という話があり、送ったところ「医師からは余命半年といわれていたが、にんじん搾りを食べて1年間長く生きた」との連絡があったといいます。
また、がんで医師から見放されたレストランのオーナーが「ダメモトでいい」と、にんじん搾りを食べ始めたところ、「がんの状態を示す数値が回復している」との知らせもあったそうです。
現在は、シャキシャキの歯ざわりが楽しめる「スウィートにんじんピクルス」などの新商品も開発。いずれもインターネットなどを中心に販売しています。農園の経営理念を「自然と人との調和を図り、健康な社会づくりに貢献し、楽しい農業を実現すること」と話す多田さんの夢は広がり続けます。
有限会社 多田農園 空知郡上富良野町東9線北18号 |