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小麦粉の2倍以上水分を吸収する米粉の商品開発の難しさを説明する高島さん。 
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 米の消費が落ち込む中、米粉を使った新たな商品の開発が注目を集めています。観光バスが店の前に横付けする光景も見られるほど、人気を集めているのが、「米粉のシフォンケーキ」を製造・販売している、「ゝ月庵(てんげつあん)」。2代目店主・高島郁宏さんは言います。 「小麦粉の代わりに米粉を使って何かを作ろうと思ったら、必ず失敗する。米粉は何を作るのに向いているのか。つまり、米粉でなくてはできない商品開発を目指した」と。

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★「米粉のシフォンケーキ」980円(税込) 
ふわふわでしっとりとした生地もちもちとした食感も加わったケーキは甘さ控えめなため、1個を1人でも食べられそう

 

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 高島さんの父親は和菓子を中心に静内町(現 新ひだか町静内)で修行。独立して、東川町で店を開きました。その際、師匠からもらった屋号が「ゝ月庵」。「ゝ」は、「間(ま)を大切にしよう」という意味で、和菓子作りにおける「間」、つまり、いろいろな素材を混ぜ合わせたり焼いたりする際のタイミングの重要性が店名に込められています。

 高校を卒業した高島さんは洋菓子の職人を目指し、小樽の「館」、東京世田谷にある「ヴィヨン」と、いずれも有名店でトータル9年間修行。一度東川に戻った後、別の店で修行することも考えましたが、情報化時代の中で、ケーキ作りのレシピなどが一般にもオープンになっているため、独自に洋菓子作りを目指すことを決意しました。

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米粉商品「絹ロール」と「出逢いのスフレ」のセット

 

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 こだわったのは「東京ではなく、東川で作ることに意義がある洋菓子」。店を継いだ当初は、東京で修行したときに学んだことをそのまま商品にしていました。例えばケーキにかけるソースにしても、卵黄に牛乳、そして最高級のシャンパン、ドンペリニヨンを加えて作っていました。しかし、それではケーキ1個の値段が500円近くに跳ね上がってしまいます。そんな高価なケーキを東川で作っても、売れるわけがありません。

 そこで思い付いたのが、東川で生産される地場産素材を使った独自の洋菓子の製造でした。

 東川は米の名産地。農家の人たちが、一生懸命頑張ってお米を作っています。しかも、東川には大雪山の伏流水という全国的に誇れる天然の名水もあります。これらをコラボレーションさせることで新たな洋菓子を作れるのではと、平成10年頃から考えるようになりました。

 最初に試作したのは、シフォンケーキでした。当初「もちもちーふぉんけーき」と名付けたこの商品は、東川産の米を加工した米粉が主原料。卵や牛乳などを混ぜ合わせ、じっくりと焼き上げます。しかし、商品開発は失敗の連続でした。試作したものを食べてみますが、納得が行くものではありません。 

 どうすれば美味しくなるのか。アイディアが浮かぶまで待って、再び挑戦。その繰り返しでした。そして1年以上かけて出来上がったのが、現在の商品。「自分が思い描いていたのは、最初に食べたときはふわっとして、続いてしっとりとするというもの。最終的にはもっちりとした食感も加わり、それらが時間差的に味わえる状況が理想だったんです」と、高島さんは出来上がったときの満足感を語ります。

 

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 ただ、発売した当初は売れ行きが悪く、悲惨な状態でした。1日に10個しか作らないのに、2個ほどしか売れないこともしばしば。要冷蔵で4日間しか持たないため、売れ残った商品は捨てることになります。状況が一変したのは、試作開始から3年後のことでした。百貨店のバイヤーが飛び込みで店を訪れ、北海道物産展への出品を打診してきたのです。何とか販路を拡大したいと考えていた高島さんと、物産展での新たな商品開拓を進めていたバイヤーと思惑が一致。物産展で販売したところ食感の良さで大ブレイクし、一躍脚光を浴びることになります。

 「米粉は水分の吸収量が小麦粉の約2倍もあるため、ケーキを焼くときは材料の配合が難しい。しかし、より多く水分を含むということをデメリットではなくメリットと考えれば、よりきめの細かい、しっとりとした食感のケーキができるんです」と高島さんは米粉の特性を生かした菓子作りの大切さを強調します。

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洒落た外観も人目を惹きます。店の看板にもアイディアがいっぱい

 

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 ブレイク後は新千歳空港の売店で販売する話も持ち込まれ、このシフォンケーキを置くことになりました。毎日3万円以上の売り上げがありましたが、バイヤーからは「最低でもこの2~3倍は売らないと、テナント料が支払えない」と言われ、販売を止めたといいます。

 しかし、そのことが高島さんに新たな挑戦を決断させます。物産展への出店も止め、東川町だけの限定販売へと踏み出したのです。背景にあるのは、大きくいえば「町の活性化」。「たくさんの人に東川に来てもらいたい」と、町に多くの人が訪れ、にぎわいを作り出すのが最大のねらいです。

 
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 米粉を素材にした新商品の開発にも余念がありません。シフォンケーキと並んで人気があるのが、「絹ロール」。米粉で作った生地に甘みを抑えた特製の生クリームを塗り、ロールケーキにしました。スポンジ生地に合うよう、甘さを調整するのに苦労したといいます。

 1袋にあえて2個のカットケーキを入れたのは、買っていった人が家で食べるシーンを思い描いたから。袋を開けて二人で食べるとき、どんな会話が生まれるのか。高島さんの想像は膨らみます。ふわふわ、しっとり、そしてモチモチとした食感は、ケーキに勝るとも劣りません。生クリームが加わったことで、口当たりが優しくなりました。

 そして高島さんは平成22年、北海道の食材を使ってケーキなどを作っている菓子職人(パティシエ)の集まり「倶楽部『ラ・ボア・ラクテ』(天の川)」の結成に向け、発起人として関わりました。この発足に合わせて参加各社が統一ブランド「出逢いのスフレ」を販売することになりましたが、高島さんはやはり米粉を主体に商品を開発。メレンゲに米粉を混ぜ合わせた生地を焼いて、スフレにしました。これに、卵黄と砂糖、牛乳を使ってアングレーズソースを作り、挟み込みます。新商品の誕生です。東川で洋菓子を作ることは、地元の素材にこだわること。米粉利用に始まった高島さんの新商品開発が今後も待たれます。

 

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★平成29年12月掲載

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