かみかわ「食べものがたり」: 矢内菓子舗「雪ふりプリン」


 

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「地元の人に愛され全国の人にも興味を持ってもらえるのものを作っていきたい」と代表の矢内眞一さん

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 雪の一片がはらはらと空から舞い落ちる。その北国の美しい情景を、小さなガラスの世界に閉じ込めました。見上げた空から舞い降りてくる雪のパッケージが印象的な、矢内菓子舗の白いプリン「雪ふりプリン」。白いふたを開ける瞬間から膨らむ期待感。そこには味のストーリーが詰まっています。

 同店から5分ほどの距離にある牧場を見ながら、「地元の生乳を使ってお菓子を作ったら美味しいだろうなぁ」と思っていた矢内菓子舗の代表矢内眞一さん。

 下川ふるさと開発振興公社クラスター推進部の方が、たまたま同店を訪れた時に「生乳を使えないだろうか」と相談。助言を受けながら、牧場を訪ねました。牧場主は快く承諾してくれたものの、その後の手続きに一苦労。保健所、道の許可、さらにホクレンとの契約。「たくさんの書類が必要で、結局1年かかりました。振興公社の方が書類を書いて手伝ってくれたのでやりとげましたが、個人ならできなかったと思います」。その手続きは、矢内さんにとってお菓子を作るよりも大変だったのです。

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★「雪ふりプリン」300円(税込) 
ふわっと口どけの優しいプリンプリンに生チョコ、それぞれ微妙に違う口どけが奏でる美味しさです

 

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 苦労の末、使えるようになった生乳は期待通りの美味しさでした。搾りたてを低温殺菌した牛乳は、コクがあり脂肪分が高く風味も豊か。パック牛乳で作るお菓子とは、ひと味もふた味も違いました。第1弾として、下川町発祥の幻想的なアイスキャンドルをイメージした「アイスキャンドルプリン」を発売しました。ラズベリーをしみこませたスポンジを炎に見立て、白いプリンの中に入れたものです。

 地元だけではなく全国へ売り出したいと考えていた矢内さんは、もっと北海道のイメージのあるプリンを作ろうと第2弾を考案。それが「雪ふりプリン」です。

 課題は、食べた時に雪のイメージをどう演出するか。目指すのは白いだけのプリンではなく、雪が降り注ぐ情景を再現させたものでした。初めはプリンの中に生チョコを入れましたが、3~4日経つと溶けて消えてしまいます。そこで、白いプリンの上に雪玉をイメージしてホワイトチョコのボールを3つ乗せました。

 雪玉は真っ白ではなく、薄いアイボリー。その秘密は、コーヒー豆です。生チョコの生クリームにコーヒー豆を入れておくと、コーヒーの風味も生クリームに移り、アイボリー色に染まるという秘密がありました。コーヒーの粉をダイレクトに入れると、色が強すぎて雪のイメージが消えてしまうのです。濃すぎず、でも白ではない。これ何だろう?と思わせるような意外性が、食べるときの楽しみに繋がります。さらに、かすかなコーヒーの香りも程よい味のアクセントになっているのです。

 雪玉の上には、チョコレートパウダーを雪のように振り掛けました。プリンは水分が多く、生チョコは口溶けが良い。口の中に入れたときに、すぐ溶けていくプリンと、ゆっくりと溶ける生チョコとチョコレートパウダー。そして、ほのかなコーヒーの香り。それらが幾重にも重なり、そこには味の物語が生まれます。

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下川町・鈴木牧場の搾りたての牛乳で作る白いプリンふたを開けると、積もる雪の中に雪玉に見立てた生チョコのボールが3つ美味しさと可愛らしさが同居しています

 

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 平成20年、「雪ふりプリン」の完成です。同商品は、商工会の全国展開支援事業の補助を受けて開発したため、パッケージにも力を注ぐことができ、札幌のデザイン会社に依頼。北海道の牧場育ちのスイーツをキーワードに、雪をイメージしたパッケージは、お土産にも最適です。

 「雪ふりプリン」のネーミングも、食べる人が想像やイメージを膨らませながら食べてほしいという矢内さんの願いが込められています。

 発売の年に、東京のナムコ・ナンジャタウンが主催する「プリン博覧会」にも出品し、全国の中から20位までに贈られる特別金賞を受賞。それをきっかけに販路も東京など道外へと広がりました。

 

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 昭和8年創業の同店は、矢内さんの伯父に当たる方がやっていましたが戦死され、矢内さんの父親が後を継ぎました。その後、東京で修行していた矢内さんが帰郷、店を受け継ぎケーキやパンも始めました。

 「安くて安全で美味しいものが1番、そこに今は個性も求められています。地元の素材を使い、この条件を満たしたうえで、楽しくてユニークなものがあっても良いと思うんです」。そんな思いで、今までも積極的に新商品を開発。「いろいろなことを考えていると、それが習慣になって頭も回転しやすくなるね」と笑う矢内さんの頭は、常に新しいことでいっぱいです。今は昔のように甘いだけでは売れません。工夫を凝らした味付けで複雑さを求められている時代。「消費者の口のレベルは高い、それに答えていかなくては」と努力を続けています。

 同店では、月1回「パンの日」があります。なんと、その日のためだけに毎回7~8種類の新商品を発売しているのです。いろいろなパン屋をのぞき、アンテナを張りながら考え、わずか数日で作り上げます。パンの日もすでに10数年。今までいったい何百種類ものパンを考えてきたのか、分からないほどです。それらの商品は、独創的で楽しげなものばかり。

 例えば、「キムタク」をもじってキムチとたくあんのパン。パンの日にはクイズも設け、お客様に楽しんでもらえるよう企画されています。「お客さんに夢や楽しさを与えたい。買ってもらうだけ、美味しいだけではなく、お菓子によって楽しさや喜び、夢となれば…。日常生活の潤いに、うちの店がプラスになればと思います」と矢内さん。

 売っているのはお菓子だけじゃなく、夢や笑顔。矢内さんの手で、お菓子の世界が広がっていきます。

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店内は和菓子や洋菓子、パンと多彩な商品が並んでいます

 

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