かみかわフードツーリズム ~トップページ~>ぴっぷいちご
濃い緑の苗と真っ赤に熟した果実のコントラストが映える畑に、人々の笑顔が見え隠れします。「いちご狩り」は比布町の夏の風物詩。人口4000人弱の小さなまちに、毎年1万人以上もの人がいちご狩りを目当てに訪れます。
いちご狩りの魅力は、熟した実を探して摘み取る楽しさと採ったばかりのいちごの美味しさ、そのふたつを同時に味わえること。「『いちご狩り』の看板を立てている最中からお客さんが来た」という逸話が残るほどの人気を呼び、北海道のフードツーリズムの先駆けとなりました。
40余年の歴史を支えてきたのは、次世代に「いちごのまち」をつないでいこうという強い想い。農業従事者の高齢化や担い手不足、燃料の高騰など多数の壁にぶつかりながらも、まちの観光資源を守るために力を尽くす人々の姿がありました。
収穫体験と美味しさのふたつを同時に味わえるのがいちご狩りの魅力。
大きく、甘いいちごを育てるためには、シーズン毎に新たな苗に植え替え、雑草が生えれば抜く、傷んだ実があれば摘むという細かな気配りが欠かせません。全てが手作業の重労働に加え、接客や駐車場、水洗トイレの整備など農作業以外の負担もあり、2002年に18カ所あった観光農園は2024年には5カ所と、大きく数を減らしています。
「いちご狩りのシーズンは初夏からの3週間くらい。人の入りは天候に左右されるし、まぁギャンブルみたいなところはありますよね」と話すのは、比布苺狩り連絡会の西本龍二会長。1ha約2万3000株のいちご狩り農園と宿泊施設を備えた観光農園を経営しています。「いちご以外も楽しめる、そんなエンターテインメントを提供したい」と、シーズン中は、フォトスポットの設置やキッチンカーの手配など、いちご狩りに新たな可能性を模索しています。そこには「今のいちご狩りは、お金を払っていちごを摘んで食べるという状態。それはもう古いんじゃないか」との思いが滲みます。
西本会長の頭にあるのは、自分で植えた苗を自分で摘んで、片付けまで自分でやるいちご狩り。「多分、超大変なんですよ。植えるのは暑いし、超汗かくし。でも頑張って植えて、みんなで打ち上げで焼肉とかして、今度は食べにくるねって」と、農業のプロセスがエンターテインメントに進化する可能性に夢を広げます。「やり方を変えたらまだ可能性はある」。西本会長のビジョンは、いちご狩りを次のステージへ導く鍵となるかもしれません。
左/町内最大規模のいちご狩り観光農園を持つ西本さん。
右上/皮をむく必要がなく種も小さいいちごは、摘んでそのまますぐに食べられる手軽さが魅力です。
右下/西本農園の敷地内に建つ一棟貸しの民泊「YADOKARI」。
農協や農業試験場などと連携した冬採りいちごの実証実験に名乗りを上げたのは、比布町の農産品を販売するNANA PLAZAの片澤英幸さん。稲作・畑作の繁忙期を避け、閑散期の冬に兼業でいちごを育ててはどうかと考えたのがきっかけでした。当時の心境を「ただチャレンジ精神だけ」と笑う片澤さん。「1年目2年目は全然できなくてもうボロボロ」と振り返ります。その後も虫の発生や暑さなど、さまざまな想定外に見舞われながらも、少しずつやり方を変え、5年目には過去最高の収量を記録。「しっかり一粒に集中すれば甘さを上げることができるとわかってきた」と、品質向上と安定生産を目指して研鑽を重ね、「ハウスを5棟まで増やせれば、冬もいちご狩りができる」と、可能性に期待を寄せます。
「比布町は『スキーといちごのまち』。冬いちごで、スキーシーズンにいちごが食べられるようにできたのは、町にとって大きな一歩」と片澤さん。冬採りいちごで比布町に貢献する思いを強めています。
左/比布町の若手農業者が経営する農産品直売所「NANA PLAZA」。
右上/ぴっぷいちごコーナー。シーズンになると採れたてのいちごがずらりと並びます。
右下/冬採りいちごについて思いを語る片澤さん。
冬採りいちごの栽培と連携して、年間を通じて比布町のいちごを使ったスイーツを販売する店も誕生しました。それが国道40号線沿いに位置する「いちごとKaoriと洋菓子店」。
「実は、比布のいちごって需要はめちゃくちゃあるんですよ」と言うのは、いちごの生産者でありNANA PLAZAの取締役も務める合田正人さん。大手の菓子メーカーからの引き合いもあるなか、「優先順位は比布が上。やっぱり地域で消費してもらいたい」と、比布のいちごをいかしたスイーツに情熱を注ぎます。
パティシエは有名店で腕を磨いた店長・かおりさん。いちごの甘み・酸味・香りをしっかりと感じられるいちごが主役の上品な味わいが魅力です。おすすめはシフォンケーキ。生地・クリームに乗るいちごはもちろん比布産。「多分、これだけふんだんに比布のいちごを使える店ってないと思う」と合田さんは胸を張ります。
今は、「比布町に来たらこれを買って帰らなきゃと思ってもらえるような名物をつくりたい」と比布町の新たな立ち寄りスポットに夢を広げます。
左/上から時計回りに「パーフェクトシフォン」「PiePieいちごパイ」「ぴっぷいちごBAKE」。
右上/「いちごとKaoriと洋菓子店」店内。ケーキのほか焼き菓子も多数。比布の新しいお土産品としても期待が高まります。
右下/「いちごはハズレがない」と語るオーナーの合田さん。
比布町のいちごは、町の人々が長年にわたり守り育ててきた地域の宝物。雄大な大雪山を望む小さなまちに、はじめていちごが植えられてから100年超、いちご狩り開始から40余年、変わらない美味しさと時代に合わせて変わる柔軟さで、これからも町に観光の灯をともし続けてくれることでしょう。
~お問い合わせ~
▶︎比布苺狩り連絡会(事務局:比布町商工観光課)
住所:比布町北町1丁目2-1
電話:0166-85-2111(代表)
▶西本農園
住所:比布町基線16号
電話:080-3295-2960
URL:https://www.nishimoto-nouen.com/strawberry/
▶︎NANA PLAZA
住所:比布町新町4
電話:0166-74-7757
▶︎いちごとKaoriと洋菓子店
住所:比布町基線5
電話:0166-85-4615
営業時間:10:00~17:00 日曜・祝日定休/不定休
★令和7年2月掲載