かみかわフードツーリズム ~トップページ~ >和酒角打 うえ田舎
地元の蔵元をはじめとした銘酒を販売する店舗の向こうに広がるのは、隠れ家のような角打ちスペース。
冷蔵ショーケースにずらりと並んだ日本酒から、飲んでみたい1本を選ぶと、その場ですぐにグラスへと注がれ、美味しい肴や会話とともに喉と心を潤します。
日本酒好きなら一度は足を運びたくなる魅力あふれる場所が、旭川市平和通買物公園にある「和酒角打 うえ田舎」。木をふんだんに使ったモダンな店内は、立ち飲みにも関わらず不思議なくつろぎが満ち、常連も一見客も分け隔てなく包み込みます。
旭川に誕生した日本酒の名店は、旭川市民はもちろん観光客も多く訪れる場として注目を集めています。
「和酒角打 うえ田舎」を営むのは、創業50年以上の歴史を持つ酒類販売店・株式会社うえ田。お客様との日々のやりとりのなかで「日本酒を飲む人が減っている」現状にふれ、「日本酒の良さをアピールする場を作りたい」と店の一画で始めたのが角打スタイル。ここで手応えを掴み2019年、旭川の目抜き通りである平和通買物公園に「和酒角打 うえ田舎」をオープンしました。
「酒屋さんって元々、いろんな人が来て情報交換する場だったんです。この場所も、そんなふうに人と物、人と情報をつなぐ地域のハブ的なポジションになれれば」と話すのは代表取締役の上田桂輔さん。そうして描いたコンセプトが「酒・食・街の架け橋」。消費者と直接触れ合う機会の少ない専門店の魅力を、日本酒を通して知ってもらうために、酒器には旭川市のガラス工房・淳工房の「木glass」を使い、肴には旭川鶏卵の半熟煮卵「うまたま」や旭川・かま鉄の蒲鉾など地場の加工食品を中心に日本酒に合う味を揃えました。
上田社長自らカウンターに立つ日も多く、そんな日はうえ田舎で飲めるお酒の説明だけでなく、酒類販売で得た情報を活かし、飲みたい銘柄が置いてあるさんろく街のお店がどこなのかを教えてくれることもあるそう。それはまるで日本酒が飲める観光案内所。上田社長が思い描いた「酒・食・街の架け橋」の姿がここにありました。
(上)上川大雪酒造(上川町)や三千櫻酒造(東川町)など、上川エリアに誕生した酒蔵の銘酒も充実。
(左)日本酒の品揃えは常時150〜200種類。好みの味を発掘するのも楽しい。
(右)日本酒に合わせる肴も楽しみのひとつ。「上田家おふくろの味」というおでんは冬の人気商品。
うえ田舎のショーケースには約40銘柄、常時150〜200種類ほどの日本酒が並びます。直接取引している酒蔵も20件超。フォトジェニックな内装とあいまって、店内はまるで日本酒のテーマパークのよう。けれど、その道のりは決して順風満帆ではありませんでした。
「20年30年前から飲食店をやっている人にとっては、うえ田は、電話一本で夜中でも配達する酒屋というイメージかもしれません」と上田社長が言うように、うえ田の顧客の多くはさんろく街にある飲食店。酒類販売店としてさまざまな酒類を取り扱っていたものの、決して日本酒の専門店ではありませんでした。
取引交渉のために約束して出かけた酒蔵も、玄関で挨拶するだけで話を聞いてもらえないことも少なくはなく、出張を繰り返してもなかなか実績につながらないため「こんなに経費をかけてまで何のために行くのか」と批判されたこともあったそう。それでも上田社長は自腹で飛行機代を払い、酒蔵巡りを続けました。
上田社長を突き動かしたのは、「日本酒って面白い」という純粋な気持ち。その「面白さ」を少しでも多くの人に伝えたい、その想いで同じ酒蔵に何度も通い、試飲会に足を運び、少しずつ名前と顔をつないでいったといいます。
そんな努力の末に取引にこぎつけた一つが山口県の旭酒造。銘酒・獺祭で知られる酒蔵です。獺祭は2010年代前半に人気が急騰。全国の酒販店で品薄・品切れが相次ぎ、プレミア価格がつくほどに。そんななかでも、うえ田では獺祭を仕入れていたことで、道内の飲食店から問い合わせが舞い込み、日本酒に力を入れていることが認知されはじめたと言います。それは、何度もくじけかけたという上田社長が「これで何とかやっていける」と手応えを感じた瞬間でもありました。
全国各地を飛び回って集めた銘酒を求めて、多くの人が足を運ぶうえ田舎。ショーケースに並ぶ多彩な銘柄一つひとつがすべて上田社長が勝ち取った信頼の証なのです。
上田社長自らカウンターに立つ日は、いつもより一層日本酒談義に花が咲きます。
蔵元でしか飲むことができなかった搾りたての味を届けるKEG DRAFT専用サーバー。
2023年、うえ田舎に新たな逸品が登場しました。道内でもまだ10店舗程度しか設置されていないというKEG DRAFTです。
絞りたての清酒を専用サーバーに充填し、冷蔵しながら日本酒をサーブができる仕組みで、酒蔵でしか味わうことができなかった搾りたての酒を注入し、できたてそのままの味を保存できるという画期的なもの。注ぎ出すその瞬間に日本酒が初めて空気に触れるため、搾りたての日本酒が持つ微発泡感、もぎたての果実のようなフレッシュ感をいつでも楽しむことができます。
「ポップアップストアのような形でいろんな場所に出て、もっとこの味わいを知ってもらいたい」と上田社長。その言葉には「常にいい状態のお酒が提供できるということは飲食店さんにとっても価値があること」という業界全体の未来を見据えた思いが滲みます。
かつて16もの酒造場が集まり「北の灘」と称えられた旭川。今も昔も、日本酒と日本酒に情熱を傾けた人たちが、この街に活力を注いでいます。
平和通買物公園に面した店舗。酒販店の奥に隠れ家のように角打ちスペースが広がります。
~お問い合わせ~
▶和酒角打 うえ田舎
住所:旭川市4条通8丁目1703-91
電話:0166-25-8222
URL:https://sake-ueda.com/
《営業時間》
13:00~21:00/角打ち営業16:00〜 毎週月曜・最終日曜定休
★令和6年3月掲載