かみかわフードツーリズム ~トップページ~ >フレンチと黒米のコラボレーション
黒米茶のミルクティーをベースにした、淡いむらさき色のアイスクリーム。黒米茶を使ったジュレの海にぷかりと浮かんでいます。その下には、甘く炊いた黒米のあんがしっとりと敷かれていました。口にするとお米の素朴な甘みと香りがふわりと広がり、黒米あんに残った米粒の食感が驚きを与えてくれます。黒米茶のすっきりとした風味が後に残り、食事の満足感を高める一品です。
素材の黒米は、古代米の一種「きたのむらさき」。ポリフェノールやアントシアニンといった健康成分が豊富に含まれており、モチモチとした食感が特徴です。
黒米は北海道の気候では育ちにくいため、これまで道産のものは存在していませんでした。そこで上森米穀店では、平成6年から生産者や拓殖大学北海道短期大学の石村櫻名誉教授と試行錯誤を重ね、研究中だった寒冷地に強い「きたのむらさき」という品種の栽培を実現させたのです。今では黒米そのものはもちろん、焙煎した「くろごめ茶」も販売しています。
黒米茶はほんの数秒できれいな赤むらさき色が出ます。ノンカフェインなのもうれしいポイント。上森米穀店では、ひと手間加えた焙煎方法で、風味や色を最大限に活かしているのだそう。
*「かみかわ食べものがたり」の「上村米穀店」の記事はこちらをご覧ください。
「何よりもまず、色だよね」と河原さん。
異業種交流を目的としたワークショップで出会い、黒米について語る鳥越さんの熱意を受けてサンプルを持ってきてもらったといいます。鳥越さんが淹れた黒米茶の鮮やかなむらさき色、そしてほんのりとした香ばしさに創作意欲をかき立てられ、これらの特徴を活かした最初の料理が、アイスクリームでした。
(作り方は普通のアイスクリームと同じ。黒米の香りを立たせるために、バニラを加えていません。)
出されたひと皿を見て、鳥越さんは「おっ!進化している」とニヤリ。実は鳥越さん、試食は3回目。最初はマンゴーソースやチアシードなど、他の素材が添えられていて「もちろんそれも美味しかった」のだそう。「せっかくだったら、とことん黒米にこだわろうと思って」。河原さんもニヤリと返します。素材に惚れ込んだ職人こだわりの一品を口にして、鳥越さんから笑みがこぼれました。
「当店と生産者が一緒に作り上げた自慢の黒米。河原さんには、黒米も黒米茶も、そして黒米粉まで使っていただいています。本当にうれしいですね」。
召し上がったお客さまからの評判も上々だ、と聞いて満足そうな表情です。上川で生まれた素材と、上川に根を張った料理人のコラボレーションが誕生しました。
(他にも、パンケーキ(左)やカヌレ(右)なども試作中。「黒米の持つ可能性はまだまだある」と河原さん。)
縁あって店を持つようになった河原さんは、「旭川の食文化を素晴らしいものにしてみせる」と心に決め、孤軍奮闘してきました。とはいえ、今のようにインターネットも普及していない時代で、いち料理人ができることには限りがあり、苦労も多かったと振り返ります。それが、ここ10年ほどの間で動き始めたのだそう。
『クラブサルセル』というグループをご存じでしょうか。
旭川の食シーンを向上させようという熱意ある若い料理人たちが立ち上げたもので、シェフ、ソムリエ、パティシエなど、50人以上の料理関係者が参加し、日々研鑽を積んでいます。さらに、生産者、加工業者なども新しい販路を求めて動くことで、今回のメランジェと上森米穀店のようなコラボレーションがいくつか実現するようになりました。何より、思いを共有した仲間が増えるということは、活動の幅の広がりにも繋がります。
「生産者と使う側とが、一緒に成長していくことが必要だと思います。例えば珍しい野菜を生産者に作ってもらいたい時には、まとまった数が発注できるよう、他の料理人に協力を仰ぐこともできますよ」と河原さん。鳥越さんも、「やはりご縁と熱意あってこそ。地域の美味しいものを、多くの方に味わっていただきたいという気持ちが、形になってきました」とうなずきます。旭川を中心とした上川の食の世界が、大きく変わろうとしているのかもしれません。
野菜、米、肉、魚、酒、水……。こうした素晴らしい上川の恵みを、多様な楽しみを与える「料理」という形で提供することができる。それを、人々を引き付ける魅力の一つにするべく、動き始めています。
▶Melanger(メランジェ)
住所:旭川市3条通7丁目つかさビル1F
TEL:0166ー56ー2595
(Facebookページはこちらから)
▶上森米穀店
住所:旭川市1条通21丁目1974-132
TEL:0166-31-5994
URL:http://www.himiko21.com/
★平成27年12月掲載