アトリエharemi『塩むすび』

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「この場所で作ることが良いんです」。農業と、のどかな自然にこだわる高倉晴美さん。

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 ターニングポイントは40歳の時でした。 それまで、ごく普通の農家のお母さんだった高倉晴美さん。

 「自分達がやってきた農業に栄養価の価値をつけたい」と平成17年、40歳で旭川大女子短大食物栄養学科に入学。「それまでは、体に良いとしか言えなかったんです。栄養的なことをきちんと学んで、消費者にも詳しく伝えたいと思いました」。一家の主婦の新しい1歩を、ご主人も、高校生になった双子のお嬢さんも温かく見守ってくれました。

 卒業後高倉さんは、短大の恩師らとレストランの開設に関わりました。仕入れから調理まで、高倉さんにとっては今までと違う世界。でも、その胸には原点に戻ろうとする高倉さんが息づいていました。「農業から離れたくない。それは自分の思いと違う」。そして大好きな農業という場で、自分にできることを考え始めました。

 「自然の中にいると、新鮮な思いが生まれる。空気も綺麗で緑が爽やかなこの場所にお客さんを呼べたら」と、高倉さんは畑の横に厨房を建てることを思いつきました。平成20年、その厨房で作った惣菜を車に乗せ、保育園などで移動販売を始めます。それがアトリエharemiの出発点です。

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★「塩(えん)むすび」(1個)140円 (税込)
 

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 高倉さんの1日は、朝4時に4つの文化釜で4升のご飯を炊くことから始まります。当初はお惣菜がメインでしたが、ある日、本に載っていたご飯と塩だけのおにぎりがとても美味しそうで、自分でも売ってみることに。炊き立ての白いご飯にサッと塩をつけただけのおにぎり。それが、クチコミでどんどん評判を呼びました。ご飯に塩だけ、そのシンプルさは、反対にごまかしがきかず、ご飯そのものの美味しさを引き立てます。美味しいご飯でなくては、握れないおにぎり。もちろんそのお米は、高倉さんがご主人と共に丹精込めて育てる「ななつぼし」でした。

 最初は時々しか作っていなかったおにぎりを、現在のように販売日のたび作るようになったのには、あるエピソードがありました。イベントで、おにぎりを買いに来た小学3年生ぐらいの男の子。1個買ってその場で食べて、「おかわり!」と、また1個。そして更に「おかわり」。結局その場で3個のおにぎりを食べていきました。最初から3個買ったのではなく、食べてみて美味しかったと、繰り返したおかわり。その姿を見て、これは他の人にも喜んでもらえるかもしれないと、通常販売に踏み切りました。

 美味しいおにぎりを握るコツは、押しつぶさないように柔らかく。また水をつけすぎるとデンプン質が固まり、硬くなりやすいので、水をつけすぎないこともポイント。高倉さんは、50個分も水をつけないで握れるそうです。温かいうちは崩れやすいですが、冷めると形がおさまり崩れにくくなります。 そして、冷めても美味しいのがななつぼしの特徴。塩は、ふわっと磯の香りが残る伊豆大島の海塩「海の精」。この塩を勧めてくれたのは、札幌で活躍するフードディレクターのシェフ貫田さん。同農場の水田の水を舐め、高倉農場のお米にあった塩を選んでくれたのです。

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販売は、上川総合振興局、旭川合同庁舎の各売店と、おいしい倉庫旭川ショップ。
販売日は月、水、金のみ。オリジナルのお惣菜、「塩むすび」と日替りのおにぎりを販売。

 

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 「何もしない農業です」。高倉さんは、ご主人と営む農業をこう表現します。農薬はできるだけ使いたくないと、田植えをしてからは除草剤を1度撒くだけ。ただ、猛暑でカビの一種のいもち病が発生した年も。カビは次の年にも影響が出るため薬を撒きましたが、通常は殺虫剤も使いません。安全のために心掛けている減農薬栽培ですが、そのために起こるクレームもありました。「低農薬だから、どうしても茶色くなった粒が入ってしまう。でも嘘は言いたくないから、それでダメな方は買わないでくださいと伝えます。今年のお米は、こういう炊き方をしたら美味しいですよと。そういう知識も消費者に方にも伝えていきたいと思っています」。

 同農場では、収量を上げることよりも美味しいお米を食べてもらうことを大切にしています。そのため収量は少なくなりますが、株間の間隔を空けて栽培。それは、毎年さまざまな方法を試し何年もかけて見つけた間隔です。「収量が少ないからと言って、あまり高い価格はつけられません。自分たちでも買える値段でないと、お客様に喜んでもらえない」と価格も抑え目に。「喜んでもらいたい」というご夫妻の思いが実を結んだ、同農場のななつぼしです。

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文化釜を使い、ガスでご飯を炊いています。塩むすびは、高倉農場を営むご主人との共同作品。
おにぎりを食べて「美味しかった」とお米を買いに来る人も多くいます。

 

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 高倉さんは、短大で学んでから食べ物に対する表現にも変化が出てきました。現在、料理教室の講師を頼まれることもありますが、ただ“今年のお米は美味しい”と言う伝え方はしません。どういう状況でどういう風に作ったのか、その美味しさができるまでの、素材の奥にある物語を伝えます。それが、さらに食べ物への理解や思いを深めてもらう事に繋がっていくのです。

 高倉さんの名刺には「農業栄養士」と書かれています。実は、農業と栄養士の仕事は兼務になるので、管理栄養士の試験を受けることも認められていないそう。それでも、農業と栄養士の勉強を生かしたいと、自分で作った造語「農業栄養士」と名刺に入れました。それは高倉さんの覚悟の表われなのかもしれません。

 アトリエではお料理教室も開いたり、場所だけを貸すこともあります。「好きなように交流の場にしています。いずれはここでも直売をしたい。商売というより、美味しいものを伝えていくことが目的です」と高倉さん。

 塩と縁をかけた「塩むすび」。このネーミングはご主人がつけてくれました。食べる人と作る人を、農場と人を結ぶ、塩むすびです。

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アトリエharemi
(高倉農場)

旭川市東旭川町豊田78-2
電話・FAX/0166-76-2052
https://ja-jp.facebook.com/Atorieharemi.enmsubi

 

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