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どら焼を割ると、深い青緑の生地。通常のどら焼のイメージとは違う、今までに見たことのない生地の色合い、それが平成20年に菓子処梅屋が開発した黒玉どら焼の美味しさの秘密です。実は発売当初、「カビではないのか?」と、この独特な色に対するクレームが相次ぎました。そのため、今は商品の中に説明を書いたリーフレットを添えています。そんなエピソードを持つ黒玉どら焼、それはある素材との出会いが始まりでした。
野菜ケーキに使う旭川産の黒大豆を探し求めて辿り着いたのが、永山の山川農園の「いわいくろ」でした。その山川さんからある日、「こんな粉があるよ」と教えられたのが、大豆を皮ごと粉砕した粉。さっそくサンプルの粉で試作してみると、焼き上がりが独特の色に。大豆は皮の色が黒く、中は白。それを皮付きのまま粉にすると、生地は青緑がかった灰色になるのです。
「まずその色にびっくりして、これは面白い、ぜひやりたいと思いました。梅屋はそれが面白いと思ったんです」と梅屋は考えた。
その後、JAあさひかわと組んで、ちょうど大豆プロジェクトを行なっていた旭川市も全面協力してくれることに話が進みました。さらに生産者である山川さんら生産組合の永山ビーンズ組合も加わり、行政や農協、生産者と一体となって、開発に乗り出しました。生産者や行政と手を携えての商品開発は、同社にとっても初めての試みでした。
また、これまでの取組みが評価され、第26回全国大菓子博覧会一般菓子部門での金賞受賞や日本各地の多様な魅力を国内外のお客様に発信する「Tastes of JAPAN by ANA HOKKAIDO」に、梅屋の「黒玉どら焼」が選ばれるなどしています。羽田空港・成田空港のANA SUITE LOUNGEでは期間限定で国内外のお客様に提供され、日本の魅力のひとつとして世界へ羽ばたいています。
★(左)「黒玉どら焼」(1個)172円(税込)
大正3年創業の老舗店が、新しい素材に挑戦した逸品。大豆「いわいくろ」を皮付きのまま粉末にして、どら焼の生地に練り込みました。
★(右)「バターどら焼」(1個)172円(税込)
しっとり柔らかく焼き上げた皮に、チーズが入ったクリーミーなバタークリームをサンドしました。
旭川産黒大豆【いわいくろ】を丸ごと入れた風味薫る一品です。
大豆の粉だけでは膨らむ力がないので、小麦粉とミックス。粉は粒子の大きさの違いで、口どけも変わってきます。配合と粒子の大きさを様々に変え、試作を繰り返し試行錯誤の上にやっと見つけたのが、現在の配合と粒子の大きさでした。
どら焼の皮が完成したら、次は中身のあんです。黒大豆だけではポロポロと落ちて挟めないので、粒あんを繋ぎ程度に混ぜ合わせました。大豆がつぶれてしまわないよう、1つ1つ、焼きあがった生地に乗せていきます。
「黒大豆は、柔らかいのが特徴です。その素材を生かして作ろうと思った。大豆がつぶれたら、それは自分が思っている商品ではなくなるんです」。ここに梅屋のこだわりが光ります。
こうして平成21年、黒玉どら焼は1年の歳月をかけて完成。大豆は体に良いとマスコミで取り上げられてから徐々に売れ始め、1年で10万個以上を売り上げているヒット商品です。
大豆は十勝というイメージがありますが、その十勝よりも生産量が多いのが旭川。旭川の大豆をもっと知って欲しいと言う生産者の思いを、菓子メーカーが受け止めて誕生した黒豆どら焼。そこには、たくさんの方の思いが織り重なっています。
粉を作る機械も、当初は北海道にはありませんでした。全国で山形県にある一社のみ。粉の供給ができるかが問題でしたが、米粉を作る目的も兼ね農協が購入することで解決。
「生産者の顔が見える、安心して食べられる素材を消費者は望んでいます。それが、地元の活性化にも繋がる。商品ができて、生産者にも喜んでもらえたのが何より。“自分達の作った大豆がどら焼になった”と生産者さんの喜ぶ顔が、本当にありがたかったですね」と梅屋さん。
黒玉どらやきのほか、シュークリームの生地に、小麦粉の代わりにJAあさひかわ産ゆめぴりかの米粉を使った「米粉シュー」や平成29年に第27回全国菓子大博覧会・三重農林水産大臣賞を受賞した「黒いチーズケーキ」など。
「素材がしっかりしたもので作ったお菓子は、息の長いお菓子になります。これからも地域に根付いたものを作り、道外にも送り込んで、旭川の良さを知ってもらいたい」。梅屋さんが足を運んで色々探してきた地元の素材を生かし、梅屋がお菓子を作る。同じ思いで築いてきた連携プレーが、これからも息の長いお菓子を生んでいくでしょう。
どら焼きの皮が風味豊かで美味しい。
「黒いチーズケーキ」が第27回全国菓子大博覧会・三重農林水産大臣賞を受賞
株式会社 梅屋 旭川市高砂台2丁目2-11 |