岩永農場『じゃがいも』

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「いもに明かりを当てると味が変わるんです」と話す岩永さん。

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 標高630mの高地に、岩永さんの農場はあります。「除草剤や茎を枯らすための枯凋剤(こちょうざい)は一切使用しません。農薬も病気の予防程度しか使いません。それと、いもは明かりが当たると味が変わってしまうんです。ですから倉庫での選別、そして箱詰め作業は手元のわずかな明かりで行っているんです」と、じゃがいもへのこだわりを話すのは岩永農場の岩永かずえさん。

 元々は牧場をやるために手に入れた土地でした。岩永さんの夫・広一郎さんは福井県の水田農家の長男でしたが、本格的な牧場経営を目指し、肉牛の飼育、牧場経営の研修を受けるためアメリカへ渡りました。研修を終え日本に帰国し、かずえさんと知り合い結婚。と同時期に、土地と牛舎を借り牛を飼い始めました。ところが、周辺が住宅地へと変貌していくのを目の当たりにし、そこで牛を飼い続けるには限界を感じて牧場の土地探しが始まりました。

 当時、国が積極的に進めていたパイロットファーム(実験農場)を夢見ていたふたり。アメリカの大規模経営を目標にしていたので、最低でも50ヘクタールが必要だと思っていました。そんな広大な土地となると、北海道しか思い浮かびませんでした。道東では別海、道北では美瑛などが候補になりましたが、たまたま紹介されたのが、南富良野町の北落合でした。

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収穫された直後のじゃがいも。
 

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 「一度も土地を見ることなく、ここに来ました。若かったからできたんでしょうね」とにっこり笑いながら振り返る妻の岩永かずえさん。夫婦でこの地に移住し、牛舎を建設して300頭以上の牛を飼い牧場を始めました。

 しかし、5~6年経ったところで、経営は厳しさを増していきます。負債が負債を呼び、行き詰まりました。また広一郎さんも体調を崩し、牧場経営は断念せざるを得なくなります。 夫婦は北落合を離れ、いったん静養することに。しかし、体調が戻ると再び北落合に帰り、牧場から畑作に切り換えました。「牧場をやっていたときも、じゃがいもやニンジンを植えていました。帰ってきてからは、近所の人に助けてもらい、畑作に本格的に取り組みました」と、かずえさんは言います。

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春のじゃがいも作付け風景。
 

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 福井県出身のかずえさんにとって、北海道のじゃがいもが本州で人気が高いことは分かっていました。そこで、良いいもを作ることに専念。北落合はたまたま手に入れた土地ですが、標高630mの高地にあるため寒暖の差が大きいのが特徴でした。この寒暖差は、じゃがいもに甘みを生み出します。また土地自体も粒子が細かく、水はけの良い火山灰でした。まさに、じゃがいも作りには最適の環境だったので、除草剤を使わず自然のままに育てることにしました。当時、一般的な農家では枯凋剤と呼ばれるいもの茎を枯らす薬を使っていましたが、これも使用を止めました。

 かずえさんは「北海道のいも掘りは、9月からが一般的です。でも、その時点ではまだ茎が残っているため、収穫作業がやりにくいのです。それで、一般的には薬を使って枯らすという方法を取っています。それが枯凋剤です。でも、うちの農場では茎が自然に枯れてゆく10月初旬ごろからいも堀りをスタートさせます。そうすることで茎の養分がいも全体に行き渡り、土の中で完熟するようになります。甘みを蓄えた美味しいいもにするためには、その方がいいんです。農薬も予防程度に使うだけで、減農薬栽培を心掛けています」と、いも栽培へのこだわりを語ります。

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メークイーン畑を背にする岩永さん夫婦。
 

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 岩永農場では、一般消費者への宅配用として「メークイン」、「男爵」、「キタアカリ」、「レッドムーン」の4種類を作付けしています。メークインは約2ヘクタール。他の3種は、それぞれ20アール程度です。

 農産物の宅配を始めたのは「本当に美味しいものを自分たちで箱詰めすることによって、生産者の想いが直接お客様に伝わるのじゃないかと感じ、またお客様からの声も聞くことができるから」とかずえさん。

 実は栽培方法だけでなく、収穫後のいもの選別と箱詰め作業にも岩永農場独自のこだわりがあります。それは収穫したいもを真っ暗な倉庫に入れ、乾燥させること。その後わずかな明かりを頼りに選別し、箱詰めするのです。かずえさんは「いもに明かりが当たると味が変わるので、倉庫でもいもに黒いシートを掛けています。暗い中での箱詰め作業は大変ですが、送った人から『美味しい』と言ってもらうことが今後の力になるんです」と、手間をかける理由を説明します。

 その「美味しさ」については、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケに南富良野町の幾寅駅を訪れた高倉健さんが、このいもで作ったいも団子を食べて「大変美味しい」と褒めたというエピソードもあるほど。

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じゃがいも「トヨシロ」の花と秋の収穫風景 。
 

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 農場では大手菓子メーカー向けにポテトチップス用のじゃがいもも栽培しているため、一般向けのじゃがいも栽培は現状の収量で限界だといいます。京都の料亭などでも使われるため、一部を京都の中央市場に出荷しているほか、出身地の北陸生協にも出していますが、大半は宅配用です。

 丁寧な作業で箱詰めされたじゃがいもは「南ふらの高原メークイン」、「南ふらの高原だんしゃく」などの名前で発送されます。選別時には、時折ハート型をしたいもが見つかることも。それを、2箱に1つの割合で詰めています。これを「幸運のハート型じゃがいも」と名付け、夢のあるプレゼントにしているそうです。

 寒さの厳しい高地にもかかわらず、枯凋剤も使わず、いもが完熟するまで待つというのは、リスクも大きいものです。しかし、それだからこそ美味しいいもができることにもつながると言えるでしょう。

 

岩永農場

空知郡南富良野町北落合4-2
電話・FAX/0167-52-3220
instagram: @bnf_1974

 

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