東鷹栖のなか農園『四季成りイチゴ「瑞の香」』

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高設栽培のイチゴのベッド前に立つ、代表の野中剛さん。

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 まだ雪の残る4月初旬、のなか農園のハウスの中ではイチゴが鈴なりに実っていました。すらっとスリムな形状が特徴のイチゴ「瑞の香」は、平成23年に品種登録された同農園独自の品種。寒い季節が旬のイチゴを一年中収穫できるようにと、代表の野中剛さんが品種改良を続けて完成させました。個人で品種改良に取り組み、登録まで果たしたのは北海道では野中さんが初めてだといいます。実はこの名前、愛娘から一文字を取って名付けたもの。一口頬張ると、みずみずしい歯ざわりの後に濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。

 「美味しいでしょ。形も色も、味も理想。作るのは難しいんですが、瑞の香がほしいと望んでくださるお客様も増えてきました」と野中さん。

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★四季成りイチゴ 「瑞の香」
よく見かけるイチゴに比べてスリムで細長いのが特徴。甘い香り以上に濃厚な甘さがたまりません。

 

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 野中さんは米農家の3代目。20歳の時に就農した際、父親から「米とは別に何か作ってみたらどうだ」と言われたことがきっかけでした。

 「イチゴかパプリカで迷って、イチゴにしました。最初はカッコイイなと思って軽く始めたんですが、周りにイチゴ栽培の先輩農家さんがたくさんいたことや取引先にも恵まれ、イチゴ栽培の楽しさを実感できています」と野中さんは笑います。

 イチゴは本来暑さに弱く、盆地である旭川では冬の寒さ以上に夏の暑さが大敵。農閑期でも収穫できるよう改良しようと、さまざまな品種の栽培に取り組みました。「どうせやるなら手に入りにくい品種にしよう」と考えた野中さん、なんと、洋菓子店で購入したショートケーキの珍しいイチゴから栽培を始めたこともあったそう。「ちゃんと芽が出たので面白くなって。それから自分でしっかり仕事としてやってみることにしました」。

 半分遊びで始めたものの、最終的に瑞の香は品種登録までたどり着きました。ここまでに6年の歳月を費やしたといいます。好奇心旺盛、探究心の深い野中さんだからこそなし得たことなのでしょう。

 現在は、瑞の香の兄弟からまた異なる性質を持ったイチゴを作ろうと取り組んでいる最中。平成30年までには、私たちの目の前に並ぶかもし れません。

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(左)左が瑞の香、右が改良中の新品種。見た目はあまり変わりませんが…
(右)中を見ると一目瞭然!新品種は、中まで真っ赤でキュート。

 

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 イチゴは通年で需要があります。メインのシーズンは冬ですが、ケーキなどの洋菓子類、特にウェディングの分野においては、味だけでなく見た目も高品質なイチゴが求められていました。一番得意な夏秋に重きを置くことになった。

 「本来、4月いっぱいくらいで国産イチゴの旬は終わってしまいます。ですから四季成りイチゴとして瑞の香が登場した時、『夏に国産のイチゴが食べられるなんて』と喜んでいただけました。形も特徴的ですから、ケーキのデコレーションで使うと見栄えも良い。僕の好みの形でもあったので、需要と供給がマッチしたともいえます」。顧客の一つである某ホテルからは、「瑞の香を使うようになって、夏でもあえてイチゴのケーキを選ぶカップルが増えた」という声も届いているといいます。

 平成30年現在、一般に流通しているのは流通は旭川市内の青果店と札幌の青果店又はWebで、札幌の数店舗のみ。予定以上の注文をもらえるほどに、瑞の香の人気は高いのです。

 

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 平成27年までの20年ほどの間に、イチゴ農家の数や作付面積は半分近くにまで激減しているそうです。重労働であるわりに、販売価格がそれに見合っていないというのが現実。負担の少ない高設栽培が広まったとはいえ、高齢化も進み離農する生産者が増えています。

 「イチゴは他の品目に比べてかかる工程が多すぎるんです。しかも毎日それが続きますから休みもなく、データ管理しようにも追いつかない。また栽培にもちょっとしたコツが必要で、それぞれの生産者がそれぞれの土地に合わせた方法で栽培しているため、栽培方法の平準化、伝達がしにくい環境にあるんです。新規就農者にハウス栽培の作物は人気がありますが、イチゴでいきなり成功した人はいないんじゃないでしょうか」と野中さんは真剣な表情。

 このようなイチゴ農家が減っていく現状を変えたいと、野中さんは、これまでにない性質を持つ新品種の栽培農家の候補として名乗りを上げました。もしこの事業が成功すれば、イチゴ栽培の世界は劇的に変わるといいます。

 「この品種を利用して、若い生産者に栽培方法を伝える仕組みを確立させたい。例えば札幌などに新しい圃場を作ってこの東鷹栖の地で学んだ人たちが働く場所にしたり、独立をサポートしたりと、僕がイチゴ栽培に関われることはまだまだあると思うんです」と意欲を見せてくれました。
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高設栽培は体への負担が少ないばかりか、土の殺菌なども行いやすいそう。近年急速に広がっている栽培方法です。
 

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 前述の新品種の開発の他にも、よく見かけるコロンとしたイチゴの栽培にも取り組みたいと野中さん。「栽培しやすさだけではなく、一般の消費者に選ぶ楽しみを提供したいなと。シーンに合わせて、瑞の香ともう一つを食べ分けていただけるように、価格も検討して選択肢を増やしたいですね。また、観光農園としてイチゴ狩りができる専用ハウスも設けたい。出荷用とはしっかり分けて、今、瑞の香を扱っていただいているお店にも迷惑のかからない形で、観光サービスにも取り組んでいく考えです」。

 観光のジャンルには、野中さんも運営メンバーとして携わる「株式会社東鷹栖シードホープ」が対応する予定。東鷹栖1条4丁目に「石蔵ダイニング米蔵(マイハウス)」という飲食店を展開しており、東鷹栖の若手生産者が集まり、自ら育てた米や野菜を使った料理を提供しています。経営も軌道に乗り、各メンバーが得意分野での力を発揮し始めたところだそう。

 イチゴを究める、そこから始まった野中さんの農業人生は、次の段階へと上りつつあるようです。

 

 

東鷹栖のなか農園

旭川市東鷹栖10線15号
電話/080-6089-8610
http://mizunoka.jp/

 

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