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自社ブランドCAMI FLAG 商品の説明をする春名正義社長。
上富良野町の丘の上、十勝岳連峰がくっきりと姿を見せる場所に興農社の農場が広がります。平成14年に設立され、ジャガイモやビートなど複数の品目を栽培しており、中でも注目されているのが小麦の加工品です。「上富良野から、上質な食べものをお届けするという私たちの『旗印』。だからカミフラッグと名付けました」と話すのは、代表取締役の春名正義さん。平成25年に立ち上げた独自ブランドで、小麦粉の他、パスタやラーメン、ひやむぎ、うどんの4種を展開し、徐々に人気を集めています。
★(上段左)パンづくり用はるゆたか 300g入450円(税込)
★(上段中)パスタ 全4種 各350円(税込)
★(上段右)ラーメン 全3種 各400円(税込)
★(下段)手延べひやむぎ、手延べうどん 各500円(税込)
春名さんが就農した昭和60年ごろから、この地域でも小麦の栽培が始まりました。高齢化などの理由で農業者が減り続ける中で、残った担い手の農地面積は広がるという状況から、できるだけ機械化が進んでいて大規模に栽培できる小麦に転換する農家が増えたといいます。それでも収益性の悪化から担い手の減少に歯止めがかからず、この悪循環を打破する受け皿として、興農社が設立されたのです。
平成27年度の農地は約160ヘクタール、そのうち小麦は80ヘクタールほどの面積を栽培しています。小麦粉としては業務用、家庭用ともに販売していましたが、実際に食べるためにはいくつもの加工手順を踏まなくてはなりません。もっと簡単な、手軽なかたちで消費者の手に届けたいと考えた春名さんは、製麺会社などと打ち合わせを重ねて小麦加工品のブランド化を目指しました。同時に、6次産業化事業者の認定も受けることになります。
「製麺会社を選ぶ際、その会社の製品を食べ比べて、自分たちが美味しいと思ったところにお願いしたんです。製麺屋さんはご自分で選んだ小麦を使い、自分のレシピで作るわけですから、私たちが持ち込んだ小麦の性質を活かす製法開発には苦労されたことでしょう。それでも私たちの思いを汲んで、今の製品に仕上げていただきました」と春名さん。
もっと消費者が手軽に小麦を味わえるようにと、パスタソースなどのセット食材やお菓子の開発にも着手。少しずつではありますが、私たち一般の消費者にも、より身近な製品の展開が見込まれています。
生産者と製麺会社が信頼関係で結ばれたからこそできた麺、ぜひお試しを。
同社製品の代名詞ともいえる小麦に、はるゆたかがあります。春に蒔いて秋に収穫する「春蒔き小麦」で、秋蒔きに比べて短期間で生長するためとてもパワーのある品種。食べても甘みが強くたいへん美味しいと人気がありましたが、病気に弱いなど問題が多く、次第に作られなくなったそうです。興農社もこのはるゆたかを積極的に栽培し、真っ先にCAMIFLAGのラインナップに投入したのには、江別市の江別製粉との出会いがありました。
「製粉会社はわれわれ生産者よりも消費者に近いところにいるので、消費者が必要とする小麦を求めています。ホームベーカリーが普及したこともあって、自宅でパンを作る人も増えたでしょう。パンに適した品種を突き詰めたら、はるゆたかになったそうです。食べてくれる人が美味しいと言ってくれる限り残したい、という江別製粉の思いに共感して、私たちも頑張ろうと思いました」。
興農社が目指すのは、国産、ひいては道産小麦の価値を高めていくこと。北海道でも道産小麦の生産・活用を推奨する「麦チェン」事業を行っており、道産小麦の需要を上げていくことが目的です。
「他の商品に比べて小麦粉は選択肢が少ないですよね。輸入品から国産、さらに道産、またそこから上富良野の…と、買い手が選ぶ楽しみを増やしていきたいんです。そこから製粉会社に『国産小麦を食べたい』という消費者からのリクエストが届くようになればうれしいじゃないですか。そのまさに旗印として、はるゆたかは最適でした」。
ただ、先にも述べたようにはるゆたかは栽培しづらい品種。CAMIFLAGの顔として品質を保つ責任を感じつつも、苦労も多いと春名さんは笑います。
(左)サンプルで保存されているはるゆたかの種。
(右)はるゆたかで作ったパンはとても香ばしく、モチモチとした食感が楽しめます。
「道産小麦は美味しいといわれるようになりました。ただ、成分値だけでは語れない部分もあります。お客さまに求められる美味しさを追求し、誰もが納得できる付加価値をつけて広めていきたいですね」と語るのは、営業活動を取り仕切る業務部部長の佐々木利之さん。CAMIFLAGが立ち上がったことで、ブランド商品の取り扱い店舗だけでなく、幅広いジャンルの取引先へ道産小麦そのものを紹介できるようになったといいます。その甲斐あって、上富良野町周辺を中心に、CAMIFLAGの小麦や麺を使った料理を提供する飲食店も続々と増え続けています。
さらに今以上に拡大するためには、消費者との直接交流も一つの方法だと興農社では考えていますが、農作業をしながら定期的に開催することは困難。そこで、農家とコミュニケーションを取りながら、消費者や飲食店・企業の方を案内できるようなコーディネーターが必要だと話してくれました。
上富良野の丘にはためくCAMIFLAGは、美味しい道産小麦の旗印として、これからも最前線で挑戦し続けます。
有限会社 興農社 空知郡上富良野町西15線北33号 |