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手塩にかけたチーズを手に語る、代表取締役の島英明さん。
美深町市街地から天塩川を渡った西側、まさに川西地区にある島牧場。道の駅びふかでは、ここのミルクを使った商品が販売されています。今回ご紹介するのは、次男の島英明さんが設立した「しまミルク工房」で作られるナチュラルチーズブランド「きた牛舎」のチーズです。
栗のようなほっくりとした味わいが特徴のラクレット、カチョカヴァロ、さけるチーズ、モッツァレラなど、6種類を製造。美深の道の駅や通販、各所での物産展などで販売しています。もちろん原料は島牧場の代表である、長男の耕一さんが育てたホルスタインのフレッシュなミルク。酪農場だからこそできる、素材の味を活かした飽きのこないチーズ作りに励んでいます。
★「きた牛舎」のチーズ。
驚くほど濃厚な風味がやみつきになります。お勧めの食べ方はホームページなどに掲載。
ちなみに「フエルサンゴ」は、ご両親が入植した時に最初に飼ったホルスタイン「シマフエルサンゴ号」から名付けられました。
昭和31(1956)年、島さんのご両親が美深町川西に入植し、酪農を始めました。以来、家族みんなで牛の世話をしてきました。やがて長男が酪農場を継ぎましたが、その後の後継者が決まりません。
函館で広告関係の仕事をしていた島さんは、「牛のいる風景が自分の故郷。その風景をなくすわけにはいかない」と考え、持続可能な事業の一つとして乳製品作りに取り組み始めました。3年以上かけて各地でチーズ作りの勉強を続けたといいます。父親が亡くなった後、平成22年に牧場の敷地内に「しまミルク加工所」を設立しました。
「最初は、ここでチーズ作りをしてくれる職人を探していたんですが…いつの間にか自分が職人になっていました(笑)。修行先で学んだ理念を受け継ぎ、来る者拒まず、みんながともに働くことができる場所にしたい」と島さん。実際にチーズ工房で袋詰めなどの作業を担当するのは、地元のパートさんたち。故郷に雇用を生みだすことにも繋がっています。
工房を建てて6年が過ぎるころ、ようやく経営も軌道に乗り始めました。「あと1,2年しっかりやれば、人並みのチーズ工房と自信を持って言える」と島さんは笑います。
ラクレットを規定の重さに切り分ける作業。微調整で出た切れ端も、おつまみチーズとして加工します。
島牧場では、ひと月に40トンの生乳を絞り、そのうち1割弱をチーズに加工。毎月300kg前後のチーズを製造しています。大切なホルスタインに与えるのは、牧草とデントコーンなどの地元作物を合わせたサイレージが中心。「ほし草のチーズ」と謳っているのは、ここに由来します。
盆地である美深町は昼夜の寒暖差が大きく、美味しい作物が育つのだそう。そんな美深の恵みをたっぷり蓄えたホルスタインのミルクは、実にまろやかで風味豊かに仕上がっています。
「広い北海道ですから、各地の気候風土が餌に影響し、ミルクの味に違いが表れます。例えば海沿いの地域では、海風を浴びた牧草を与えるからミネラル分が含まれる、とか。上川の牛乳はそのような突出した特徴はありませんが、年間通して品質が安定していると評価が高いんですよ」。
島さんは美深産のミルクそのものの美味しさを、一般の消費者の方へ届けたいという思いも持っています。いずれはミルクプラントを設置する計画だそう。また、牧場見学など消費者と生産者との交流の場を設けることで、牛たちが育った美深の空気を感じてもらい、チーズや牛乳への親しみを深めていただきたい、そう考えているといいます。
チーズの評判は口コミを中心に広がり、上川近郊で行われるホテルとのコラボレーション企画や、料理教室などでも使われるようになりました。町のお祭では、ラクレットと地元産の小麦「ハルユタカ」を使ったピザを出すのが定番に。1時間待ちの行列ができるほどの人気だそうです。
また、町の料理教室ではチーズとバジルを合わせたレシピの考案など、次第に地元での認知度も高まってきました。
島さんの夢は、チーズを食べる文化そのものを美深に根付かせることです。それが、美深に酪農があり続けるために最も大切なことだと考えているから。
「パートさんが、お昼休みに楽しくおしゃべりしながら美深産のチーズをつまんでいる風景が、いちばんの理想。ピザとかレシピをきっかけに、ハード系のパンとチーズの組み合わせの美味しさも伝えたい。実は自分でパンも焼こうかなと思ってるんですよ(笑)」。
実に楽しそうに夢を語る島さん。 その夢が夢でなくなる日も近いかもしれません。
ラクレットを使った料理はとても簡単。いつもの食卓におしゃれなひと品を添えてみては。
きた牛舎(株式会社北ぎゅう舎) 中川郡美深町川西50番地 |