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店主の鈴木伸二郎さん。奥様と二人で切り盛りしています。
上富良野町の丘の道を深く進んだところに、「けむり屋」の工房兼直売所はあります。工房までの道にはところどころに案内看板があり、「見つけながら走るのもゲームのようで楽しい、とおっしゃるお客さまもいらっしゃいます」と、店主の鈴木さんが笑います。
鈴木さんのソーセージは、新鮮な生のかみふらのポークを使用し、桜のチップや薪でゆっくりと燻したもの。添加物をいっさい加えずに作られています。その原点は、開業当時、生まれたばかりだった娘さんに、毎日食べさせられるソーセージをという思いでした。
(左)「けむり屋」のソーセージやハム。全部で20品ほどが用意されています。
(右)交差点には必ず誘導看板が。これを目印に進めば迷うことはありません。
鈴木さんは札幌の出身。大学入学とともに関東へ出て、システムエンジニアとして働いていました。10年ほどのちに札幌に戻ってきます。小学生の頃から、自然の中で暮らしたいという思いがあった鈴木さん。「何をもって生計を立てるかを考えた時に、真っ先に農業が浮かびますよね。ただ経験もなく、資金も相当かかると分かり、別の道を探りました」。
鈴木さんは道を見つけるため、道北の福祉関係の事業所で働くことに。ちょうどその時に立ち上がったのが、ハムやソーセージの工房を作る事業だったのだそう。これが鈴木さんの転換期となりました。2年ほどでこの事業は軌道に乗り、鈴木さんは独立することを決めます。
「新鮮な豚肉が手に入ること」を条件に、新天地を探していた鈴木さんは、雑誌の広告に載っていた今の土地と出合います。離農した農家さんの家、大きなD型倉庫、納屋がついていました。
さらに上富良野町には「かみふらのポーク」というブランド豚があり、新鮮で安全な豚肉が食肉センターから仕入れられることから、購入を決めます。そして、福祉関係の事務所で学んだDIYの技術を活かし、わずか4カ月ほど、しかもたった一人で、住居を整え、倉庫を衛生管理の行き届いたソーセージ工房に改築してしまいました。
「ちょうど娘が生まれたばかりで、もちろん妻は娘にかかりっきり。釘100本くらい打ってくれましたかね(笑)」。
その後、さらに4カ月かけて商品の試作を繰り返し、平成9年、けむり屋をオープンさせました。現在の直売所は、平成12年に増築したものです。
工房兼直売所。建材の質感そのままの店内には、いたるところに豚のオブジェが。
「舌をペロッと出しているのは義理の父がプレゼントしてくれたもの。他は、お客さんが持ってきてくれるんですよねえ(笑)」
前述の通り、けむり屋の製品には添加物をいっさい使っていません。無添加であるがゆえに、賞味期限が短く取り扱いも難しく、どこでも販売できるわけではないというデメリットもあります。それでも無添加にこだわり、販売方法にも注意を払っています。
「真空パックの加工品は、常温で長持ちすると思われる方が多いようですが、うちのソーセージはそうではない。保冷バッグで持ち帰り、必ずその日のうちに冷蔵庫に入れられる方にしかお売りしていません。観光の途中で立ち寄っていただく方も多いのですが、お帰りの日以外はご自宅への発送で対応しています。ご面倒と思われるかもしれませんが、やはり安心・安全で、美味しい状態で召し上がっていただきたいですから」。
そんな鈴木さんの思いはもちろん奥様も共有しています。隣接する夏季限定のカフェでは、奥様が焼いた天然酵母のパンで、鈴木さんのソーセージをはさんだホットドッグを提供。けむり屋の味をいちばん美味しい状態で楽しめるお店です。
「食べものだから、自分が美味しいと思うものしか作れないでしょう。好みは人それぞれありますから、私たちが作る味を愛してくださる皆さんが、このお店を繋いでくれています」。
二人のお子さんも大きくなり、この家を出て行きました。
夫婦二人で営むけむり屋からは、今日も美味しそうな香りが漂います。
カフェは6月中旬~8月の土・日曜・祝日のランチタイムのみの営業です。
けむり屋 空知郡上富良野町沼崎農場1652-58 |