伊勢ファーム『江丹別の青いチーズ』

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「自分が作りたいチーズが、やっと安定して作れるようになりました」と伊勢昇平さん。

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 「本当に美味しいブルーチーズは臭くないんですよ。チーズ自体のうまみを楽しめるのが僕の作りたいチーズ。うちは牧場なので、質の高い牛乳が持っている力や繊細な味をもっと引き出して、うまみがひろがっていくチーズを青カビの力を借りて作るというのが僕のチーズだと思っていますし、目指している方向なんです」と伊勢昇平さん。生まれも育ちも旭川市江丹別の、若手チーズ生産者です。

 伊勢さんのブルーチーズをひと口食べてみると、新鮮な牛乳を濃縮したような印象を受けるはず。濃厚で芳醇なコクと甘みが、程よい塩分と交わりあって口の中に広がっていきます。青カビの独特な香りやチーズ自体の香りも控えめで、俗に言われがちな「臭くて塩分がきつい」ブルーチーズとは一線を画しています。いつまでも続く余韻につられて、ついもうひと口食べたくなります。

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★伊勢さんの「江丹別の青いチーズ」100gあたり800円。
 

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 伊勢さんがチーズ生産者を目指したのは高校2年生のとき。将来の進路を考えるにあたり、なんとなく自分はサラリーマンには向いていないだろうと思ったそうです。自家の牧場は兄が継ぐので、実家の牛乳を使って何かできないかと思い、調べているうちにチーズの本が目に留まります。牛乳が主な原材料なのに世界中に多種多彩なバリエーションがあることに心奪われ、即座にチーズの虜になったのがきっかけです。食品衛生管理者の資格が取れる帯広畜産大学を受験し無事合格。大学時代は近くのチーズ工房を手伝い、卒業後は『共働学舎新得農場』でチーズ作りの修行をします。しかし、この時点ではまだブルーチーズとは出会っていないのです。

 共働学舎新得農場では「その土地でしかできないものがある」と強く教えられます。江丹別でしかできない1種類のチーズを極めようと思った伊勢さんは、ヨーロッパの中で江丹別と気候が近い場所を調べ、フランスのオーベルニュという地域を突き止めます。その一帯はブルーチーズの産地が集中。

 「これは!と思って1週間ほど行ってみたんです。そうすると牛の飼い方から気候風土まで、びっくりするくらい北海道に似ていて、ここと同じものを作れば絶対間違いないと思ってブルーチーズに決めました」と伊勢さん。平成22年のできごとです。

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薄くスライスしてトーストに乗せ焼いて食べるのが伊勢さんのおすすめです。
臭みが少ないため、そのままでも美味しく食べられます。ゆっくり口の中で溶かして食べると味の変化を楽しめます。

 

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 帰国後、チーズ工房が完成し早速ブルーチーズを作りはじめます。半年ほど試作を重ね、販売を開始してから最初の1年くらいは順調で、自他共に認める素晴らしいチーズができていました。しかし、季節の変化ごとに失敗が増え、試行錯誤するたびに泥沼にはまっていきます。

 ブルーチーズの製法は大きく分けて2つ。この時はイギリスやイタリアで行われている、どちらかというと古い作り方をしていました。しかし、今までとは違う製法、主にフランスで行われている新しい製法に変えることを決意した伊勢さんは平成25年、再び渡仏し、オーベルニュへ1週間滞在します。ところが帰国後、見学したとおりに試作を始めるも、まったくうまくいきません。うまく青カビが入らなくて製造した3分の1以上が廃棄になり、平成26年はほとんど休業状態に。

 それでも、ブルーチーズへの情熱を捨てきれない伊勢さんは、「平成26年の大晦日まで諦めずチーズ作りに専念して、大晦日もだめだったら平成27年の元旦からチーズ製造を一切停止する。ワーキングホリデーの制度を使って渡仏し修行を行う」と決めます。

 やがて、平成26年の大晦日がやってきましたが、残念ながらうまくいきませんでした。伊勢さんは気持ちを入れ替え、元旦からフランス語の勉強を開始し、渡航の準備を始めます。

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(左)旭川市と幌加内町との境目にある牧場で飼育されている乳牛が、伊勢さんのチーズを支えています。
(右)一度の仕込みでは牛乳150リットルを使用。1カ月で250kgほどのチーズができます。

 

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 平成27年5月に3度目の渡仏を果たした伊勢さん。「ブルーチーズの命、青カビがうまく入らない現象の原因究明」が最重要課題だったわけですが、オーベルニュの大手チーズ工場での修行で、解決策を見つけました。
 「カビがうまく入らないという現象はフランスでも起きます。この工場で、僕の今までの失敗の原因が分かり、対策方法を学ぶことができました。やはりチーズ作りの本場に行ったことは間違いではなかった。学ぶことがいっぱいあって、とにかく有意義な期間でした」と伊勢さんは当時を振り返ります。

 その工場に半年ほど勤めた後、さらにいくつかの工場の見学や作業の手伝いをしました。やがて所持金が底を尽き、野宿するまでになったのだそう。伊勢さんはそこまでして、貪欲にブルーチーズ作りを体に染み込ませようとしたのです。

 修行が終わり、帰国したのは平成28年の2月。いよいよ「江丹別の青いチーズ」作りが再開しました。

 「ブルーチーズ作りでは、乳酸菌、青カビ、酵母菌は専門業者から買って使用します。フランスで購入できる乳酸菌は数百種類で、牛乳の性質や作りたいチーズに合わせてピンポイントで菌を選べるのに対し、日本では数種類と菌の選択肢が少ないため『菌にどれだけ合わせていくか』という作り方になるんです」。
 それでも修行の経験をフルに活かし、自身が目指す「実家の牧場の質の高い牛乳が持っている力や繊細な味をもっと引き出して、牛乳自体のうまみがひろがっていくチーズを青カビの力を借りて作る、けっして臭くないチーズ」が安定して作れるようになってきたそうです。

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(左)熟成庫の中では、チーズが入ったコンテナが天井まで所狭しと詰まれています。
(右)出荷ができる状態まで熟成が進むと、カットして出荷されます。

 

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 今、ヨーロッパではブルーチーズのアレンジが流行していて、中でもワインの搾りかすで熟成したブルーチーズはとても人気があるそうです。アレンジのブルーチーズも作ってみたいと思っていた伊勢さんはワインにヒントを得て、同じ旭川の高砂酒造、しかも道産酒造米「彗星」の酒粕で熟成することを思いつきます。

 「試作品が見事に美味しくて、これなら売れると確信しました。ブルーチーズ全体の雰囲気が驚くほど変わるんです。日本でしか作れないチーズなので、ヨーロッパの人たちも『ぎゃふん』と言うと思います(笑)。平成28年中にこれを商品化して日本で売りながら、フランスでも販売できないかなと思っています。ヨーロッパはチーズもワインも地名がついてるんです。だから僕が作る酒粕熟成のアレンジブルーチーズの名前は「旭川」にしようと決めています。フランスで一番有名な日本の地名になればいいですね」。

 伊勢さんは今日も江丹別から世界を見据えてブルーチーズを作り続けています。

○みなさまにお知らせ
 そして、平成28年12月に発売された「酒粕ブルーチーズ『旭川』」は、道が行う「北のハイグレード食品」の認定や、北海道新技術・新製品開発賞を受賞するとともに、旭川市のふるさと納税返礼品に選定されるなど、多くの方々から高い評価をいただいています。

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伊勢ファーム

旭川市江丹別町拓北214
電話/0166-73-2148
https://m.facebook.com/etanbetsu.blue/

★平成28年12月掲載

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