ドルクスフードプランニング『富良野ホットケーキミックス』

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「なんか面白そうだから」と気づけば富良野に4店舗を展開するオーナーに。NPO活動にも力を入れている齋藤さん。

　地域の食の魅力を多くの人に紹介する常設市として、今や富良野に欠かせない観光スポットとなった「フラノマルシェ」と「フラノマルシェ2」。齋藤雄一さんは、ここで、本格ハンドドリップコーヒーなどのドリンクと軽食が楽しめる「カフェプティプティ」や、富良野と北海道の素材にこだわったオリジナルハンバーガー店「ぷちぷちバーガー」などを展開するドルクスフードプランニングの代表です。

齋藤さんの富良野初出店がフラノマルシェ2に店を構える「カフェ プティプティ」。
本格ハンドドリップコーヒーと手作りスイーツが人気です。
 

　富良野で経歴が活かせる仕事が決まり働き始めますが、観光客が途切れ閑散期を迎えた時期に、移住時に何かと相談に乗って世話をしてくれた富良野市の担当者が、ちょうど立ち上げ準備中だったフラノマルシェ2のテナントとして、「応募してみないか？」と声をかけてくれました。当時、独立は考えていなかったという齋藤さんですが、「やってみようかな」と心が動かされ挑戦を決めました。

　このとき齋藤さんの心に浮かんだのは、高品質な小麦粉作りに励む地元の小麦農家の姿でした。

　小麦粉は含まれるグルテンの質と量によって、薄力粉と強力粉に分かれます。パンやピザなどに多く使われるのが強力粉。グルテンの含有量が豊富で弾力性に富み小麦の味がわかりやすいのが特徴です。一方、薄力粉はグルテン量が少なく、粒子はサラサラとしてきめ細やか。サクッとした軽い食感とふんわりやわらかな仕上がりが、お菓子作りに適しています。ただ、小麦のそのものの味はあまり感じられません。

　「せっかく生産者がこだわって作っても、加工されると小麦本来の美味しさが伝わらない。小麦の甘みや旨味、香りを楽しめるお菓子をつくりたい」と、小麦を生かしたシンプルなホットケーキで勝負することに決めました。

　目指したのは「ちゃんとしたおいしさ」。

　粉として売る以上、焼きかたやクリームやシロップなどで美味しさを加えることはできません。一つひとつの素材が持つ力とそれぞれが組み合わさった時のバランス、それがダイレクトに味の違いとなって返ってきます。メインとなる薄力粉は、上富良野の小麦「きたほなみ」に決めました。その豊かな香りと旨味をベースに、旭川産ゆめぴりかを使った米粉で甘みとコクを加え、甜菜糖とバターミルクもすべて北海道産、ベーキングパウダーはアルミフリーを使いました。試作を繰り返しながら選び抜いたものばかりですが、まだまだ素材へのアンテナは張り巡らせたまま。「ここから大幅に変えることはもうないと思うけれど、今より美味しくなるなら、改良はしていきますよ」とあくなき探究心をのぞかせます。

　ラインアップは、プレーンと7つの発芽雑穀入りの2種類。どちらも今流行の「ふわとろ食感」ではなく、しっかりもっちりとした焼き上がりで、どこか懐かしさが感じられる味わいです。

　7つの発芽雑穀入りは、小粒大豆や小粒小豆、黒大豆などが織りなす香ばしさとかすかな塩味がアクセントとなり、パンのように食べたり、サラダに合わせたりと食事との相性も抜群。さらに現在はそば粉をブレンドし、ガレット風に食べられる新作を試作中なのだとか。道産小麦の可能性がどんな味わいとして表現されるのか、完成が楽しみです。

富良野ホットケーキミックス粉はプレーンと発芽雑穀入りの2種類。
カフェプティプティのほか、通信販売でも購入できます。

　「面白いと思えないと仕事ができないから、やるかやらないかは楽しそうかどうかで決めちゃいます。自分にとってプラスになりそうなことが目の前にあったら、まずチャレンジしてみる。その方が、きっとその先にまた、いろんな可能性が広がってくるのかなって」。そんな思いで走り続け、気づくと、富良野市内4店舗を経営するオーナーになっていました。どれも空きテナント、閉店、撤退などを機に、齋藤さんに声がかかったものばかり。「齋藤に言ったら何かやってくれる、というイメージなのかも」と笑います。

　最近、町の人に「まだ7年？ 2〜30年くらいいるのかと思った」と言われるようになったのだそう。あえて知り合いゼロで移り住んだ富良野に、「ようやく受け入れられたのかな」。少し照れたような笑顔に、喜びと誇りがあふれていました。

次にやりたいことは「銭湯」。その意外性も齋藤さんの魅力

★令和3年2月掲載