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恵みをもたらす笹を前に笑顔を見せる牧野社長。
雄大な大雪山系が育む自然の恵みを「奇跡のひとしずく」へと変える、それがサンアース大雪株式会社。
2026年には創業40周年を迎える老舗は、挑戦と進化を重ねながら歩んできました。先代から受け継いだ地域への深い想いと、現社長である牧野さんが生み出した革新的な商品「くま笹Chai」。その「一杯の幸福」には、豊かな大地とそれに寄り添う人々の揺るぎない絆が息づいています。

低・中標高の山裾から高原帯まで広く自生するくま笹は大雪山連峰を間近に望む上川町にとって身近な存在。冬の厳しい寒さの中でも緑を保つ生命力の強さは、古くから薬効が高いとされてきました。そこに着目したのが先代社長。「この体に良いとされるくま笹で、人々から喜ばれる商品をつくり地域に雇用を生み出したい」。その想いを引き継いだ現社長・牧野悦子さんもまた、地域の人々と豊かな恵みをもたらす「山」を大切にしています。
「すべてを取り尽くすのではなく、次の世代にきちんと残していくこと。それが大前提です」と話す牧野さん。
この言葉の背景には、2023年に上川のくま笹が見舞われた予期せぬ出来事がありました。光が届かない湿った土地でも冬の寒さでも耐え抜く強さを持ち、それゆえに「生命力」の高さが際立っていたくま笹が、一斉に枯死していたというのです。いつもは青々と生い茂っているはずの笹薮が、枯れ草色に染まっている信じがたい光景が広がっていました。
種を実らせて枯れる。120年に一度とも言われる、笹の生命のサイクルがもたらした自然現象。とはいえ、その光景は「本当にショックでした」と、牧野さん。「今は枯れていない場所を探して、新しい芽を踏まないよう種から芽吹いた笹を大切に使っています」と、その苦労を明かします。
笹取り作業には自然への敬意が欠かせません。地元のベテランたちが山の奥深くまで分け入り、一つ一つ厳選する採取方法は昔も今も変わりません。熟練の目利きになるには3年はかかると言われるほど、厳しさと経験を要する作業。夏場は虫やダニ、そして時にはヒグマとの遭遇も。「ヒグマと出くわしても逃げたらダメ。逃げたら獲物と思われる。すり足でゆっくり後退する。それが一番安全です」。サラリと語られる対応策に、自然のなかに踏み込むことの覚悟が滲みます。
「みんなにはよく『わたしたちってハンターだね』って言ってるんですけど、今は獲物がなかなか見つからなくて大変なんです」と、笹採りの苦労をユーモラスに語ります。自然の厳しさと隣り合わせ。それでも、葉が大きくて分厚く、栄養成分がぎゅっと凝縮された北海道ならではのくま笹を求めて、山へと分け入ります。

多くの笹が枯れたなか、わずかに点在するくま笹の群生地。今はここが笹採りハンターの主戦場。

くま笹はその薬効の高さと手に入りやすさから、家庭で乾燥させ自家製くま笹茶として飲まれることも多い植物。ですがそうやってくま笹茶に触れた人の中には「青臭い」という声も多く上がります。けれどもサンアース大雪のくま笹茶は、苦味がなくすっきりとした味わいが特徴。それこそが先代が築き上げた独自の加工技術と、牧野さんの飽くなき探求心が生み出した努力のたまものです。
くま笹茶作りの工程は「乾燥」させて「煮出す」といった、家庭でも気軽に試せるほどシンプルなもの。 けれどもサンアース大雪ではこの基本的な作業にこそ、プロの知識と長年の経験に裏打ちされた数々の工夫と、徹底的な手間暇を凝らします。
「季節によって葉の状態は全く異なります。最適な季節に収穫した笹に限定して、何段階もの工程を経て独特の青臭さは徹底的に抜いています」と牧野さん。どの季節が最適でどんな工程を経ているのかは当然ながら「企業秘密」。家庭で味わうものとは一線を画すプロならではの美味しさは、こうした努力と積み重ねてきた確かな知識と経験に支えられているのです。

左)くま笹の焙煎風景。熟練の職人がくま笹の状態を見極めながら丁寧に仕上げていきます。 右)くま笹茶 焙煎

その技術の粋が拓いた新境地、それが「くま笹Chai」。
開発のきっかけは、牧野さん自身が見舞われた更年期障害による体調不良。「とにかく体調がキツくて辛くて。特に冷えはひどかったんです」と当時を振り返ります。そこで手に取ったのが、好きだったチャイ。「好きなものを飲んで少しでも楽になりたい」という気持ちだったと言います。ところが、ふと原材料名に視線を落とすと目に飛び込んできたのは「香料」の文字。それも「けっこうな量」だったそう。チャイは好きでも、不自然なものはあまり体に入れたくはない。「じゃあ、自分のところで本当に体に良いものを作れないかなって」。くま笹が持つ血液や腸への効能に加え、冷えに効果的なジンジャー、咳止め効果が期待されるカルダモンなど、厳選した5種のスパイスを0.1g単位で調整。何度も試作と試飲を重ねてトライアンドエラーを繰り返し、飲むと体がポカポカ温まり、心までほっとする一杯にたどり着きました。
「皆さんが想像するチャイの紅茶葉の色や香りをくま笹で出すのが本当に難しかったですね。葉の選別から加工方法、スパイスのブレンドまであらゆる可能性を探って、2年間は試行錯誤の連続でした」と牧野さん。それでも挑戦を続けたのは、くま笹の可能性を最大限に引き出し「若い人にも取り入れてもらいやすくしたい」という想いがあったから。くま笹チャイの美味しさが少しずつ知られるようになってからも、お客様からの「作るのが面倒」という声に応えるように、気軽に楽しめる「くま笹チャイシロップ」を開発したり、スパイスとレモン果汁を加え、すっきり爽やかな「クラフトコーラ」を生み出したりとくま笹の新しい楽しみ方を発信し続けています。若者層へのくま笹の普及も、社長が目指す大きな目標。高齢者のものというイメージだったくま笹茶は、「おいしい」と笑顔で喜んでくれる若い顧客も増え、その裾野を少しずつ確実に広げています。

左)「くま笹Chai」を気軽に楽しめる「くま笹Chaiシロップ」。シロップと牛乳を混ぜるだけで本格的な味が完成します。
右)サンアース大雪の商品ラインアップ。左からくま笹エキス入り北の三升漬・南蛮味噌・行者にんにく/くま笹塩<肉用><魚用>/Chai Syrup&Craft Cola/くま笹Chai/くま笹茶焙煎

サンアース大雪は地域の活性化にも力を注ぎます。社長の牧野さんは、先代が大事にしていた「地域の雇用に繋がるように」という想いを引き継ぎ、年齢や性別に関係なく誰もが気軽に働ける環境を整えています。時には工場のルーティンを変更してでも、従業員それぞれの事情、例えば「短い時間でも働きたい」「自分のペースで」といった地域の人々の働き方を最大限に尊重しているのです。 山に入りくま笹を採取する方々の中には、人生経験豊かなベテラン勢も多く活躍しています。自分のペースで、無理なく地域に貢献できるこの環境は、単なる収入源としてだけでなく、働くことへの喜びや生きがいにもつながっていることでしょう。
「工場長と私の娘、そして笹採りの方々を含めても本当に少人数なんです」と語る社長。だからこそ、年齢や体力、生活スタイルといった各従業員の多様な状況に寄り添い『一緒に仕事ができる環境』をこれからも大切にし、地域を元気にしていきたいと笑顔を見せます。
創業から40年。その道のりは、平坦なものではありません。自然の猛威に直面し、新商品開発では数々の壁にぶつかり、小規模ならではの発信力の課題にも挑み続けます。それでも、サンアース大雪の情熱は尽きることはありません。
「これからも、くま笹を大事に、新しい商品を作り続けていきたい。それが、この大雪の地が育んだ恵みを、多くの人に届け、地域を元気にする一番の道のりだと信じています」
北海道上川の豊かな自然の中で育まれ、人々の想いと工夫が詰まったサンアース大雪のくま笹Chai。その一杯には、上川の豊かな風土と、未来へと続くサンアース大雪の挑戦が確かに息づいています。

くま笹を採取するくま笹ハンター。次の芽を残しながら状態の良い葉を瞬時に見極めて行きます。
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サンアース大雪 株式会社 上川郡上川町日東15-2 |
★令和8年2月掲載





